新型コロナウイルスの感染拡大により中止となった第92回選抜高校野球大会(甲子園)に、21世紀枠での出場が決まっていた磐城(福島)で29日、大会で着用予定だったユニホームが、木村保監督(49)から部員20人全員に贈呈された。木村監督は4月1日付で福島商に転任し、県高野連の事務局で業務にあたる。また大場敬介部長(30)も千葉県立旭農に転任する。

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46年ぶり3度目のセンバツは幻に終わったが、新調されたコバルトブルーのユニホームとともに、磐城野球部は前に進んでいく。体育館での自主練習終了後に、20人の部員は互いの間隔を広く空けて整列。木村監督から1人1人に、激励の言葉とともに真新しいユニホームが贈呈された。千葉県の教員採用試験に合格した大場部長からは、リュックが手渡された。「一緒に甲子園」の夢がかなわなかった恩師2人の、熱い思いが詰まった贈り物だった。

18人のベンチ入りメンバーから1人だけ外れることになった菅波陸哉外野手(2年)にも19番のユニホームが用意された。木村監督は「お前はこのチームの中で一番いろんなものを背負ったと思う。メンバー発表の後の練習に取り組む姿勢がすごい立派だった」と称賛。遠藤百恵マネジャー(2年)にも選手と同じものが渡し、「ずっとチームを支えてくれた大きな存在。マネジャーの1人じゃない。このチームはお前を含めて20人で1つだ」とワンチームの大切さを伝えた。

木村監督は「20人が束となって、4月から夏に向けて頑張ってほしい。このユニホームは特別な時に使ってくれれば」と願いを託した。「特別な時」とは甲子園であることは選手もわかっている。贈呈式を終えると岩間涼星主将(2年)が仲間に声をかけた。「いろんな人の思いを背負うべきだと思う。中止という残念な結果になって、あの舞台にいけなかった。夏に向けてもう1回1つになって、『絶対に夏は俺たちが行くんだ』という強い気持ちを持ってやるしかない。甲子園でプレーする姿を、先生たちに見てもらえるよう、1日1日頑張っていこう」と恩返しを誓った。30日には、この日受けとったユニホームを身にまとい、木村監督から最後のノックを受ける。【野上伸悟】

○…一年を通じて比較的温暖な気候から「東北のハワイ」とも言われるいわき市で、朝から雪が降り続いた。3塁側後方の桜並木は満開まであと少し。春の到来を告げる桜と、季節外れの雪が不思議なコントラストを見せた。木村監督は今日30日に、グラウンドで最後のノックを希望していたが、体育館に変更を余儀なくされる見込み。センバツ中止に続き「どこまでやらせてくれないんでしょうか」と残念そうだった。