久慈(岩手)が1997年(平9)夏以来41年ぶりの甲子園出場に挑む。

主将の中村琉暉内野手(3年)やエース左腕・間峠恒成(3年)は、中3時の17年に春夏連続で県大会決勝まで進出した先輩たちの姿に憧れ、同校進学を志願した世代。入学以降は新校舎建設で自校グラウンドが使用出来なかったが、久慈市営球場を提供してくれている地元への感謝の意も持ち続けている。同県の公立校が聖地切符をつかめば、1994年(平6)の盛岡四以来26年ぶりの快挙。昨夏に決勝進出した大船渡以上の旋風を巻き起こすつもりだ。

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中軸を担う中村が、最後の夏に向けた思いを明かした。「自分たちは盛岡大付や花巻東の強豪私立を倒して甲子園に行きたいと思って久慈高校を選んだ。地元の方も支えてくれていますし、最後の恩返しのためにも柴田先生(監督)も甲子園に連れて行きたい」。新型コロナウイルス感染拡大の影響でゴールデンウイーク中は休校で部活動も停止したが、成長の手応えは十分感じている。

卒業した先輩たちから取り組み方を学んだ。授業終了後は自転車置き場までダッシュし、球場まで約15分の道を急いだ。少しの時間もムダにしない姿勢。気の緩みから退部届提出を監督に求められたこともあった上級生は、話し合いを重ねてチームワークを高めて野球につなげてきた。「自分たちは遠慮して部員同士が言い合えないこともあった。それが一番ダメなことだと思ったので、良いプレーは褒め合い、悪い行動は指摘し合い、喜怒哀楽を共有することを重視したら良い方向に向けた」。各ポジションの考えも分かり合えたことは守備の連係はもちろん、つなぐ打線の形成にも効果が出た。

中村は昨夏からの主力。大船渡との準々決勝ではチーム初安打に加え、同点適時打も放った。だが延長で敗れ、勝利に直結しないと悔しさしか残らないことも知った。今冬は突っ込みやすい打撃を自覚し、スローボールを引きつけてバットの芯で捉えることを反復。修正した姿は、仲間の信頼もさらに引き寄せた。

休校明け後の練習試合でも強豪私立相手に打ち勝った。「3番を打たせてもらっているが、長打は打てないので、自分が絡んで1点でも2点でも取れることを意識しています」。久慈市は13年のNHK朝の連続ドラマ小説「あまちゃん」のロケ地。今度は野球で地元を盛り上げ、「じぇじぇじぇ~」と驚かせる夏にする。【鎌田直秀】

 

間峠には忘れられない1試合がある。昨秋の県大会2回戦。5-5で迎えた9回表に盛岡三打線に痛打されて3失点し、敗れた。「抜けた球を打たれた。自信がなかったメンタルの弱さが出てしまった。試合に臨む積み重ねが悪かったと思う」。今冬はブルペンでの1球1球にこだわり、「何で良い球じゃないのか?」の細部を求め続けてきた。

184センチの長身から、球持ちの良いカーブやチェンジアップを生かして、直球を速く感じさせる技術はレベルが高い。「春の大会はなくなってしまって悔しいけれど、今は夏に向けて集中出来ています。地元の久慈高校が決勝まで勝ち進んだ先輩たちに憧れてきた。次は自分たちがという気持ちでいます」。左腕・丹治将汰(3年)や右腕・滝谷柊太(2年)、左腕・播磨颯和(2年)らとの投手陣の中、先発でもロングリリーフでもフル回転する。