夏の代替大会に出場するドラフト候補紹介企画の第2回は「西日本編(下)」。伊香(滋賀)の隼瀬一樹投手(3年)は、伸びのある直球で昨秋の滋賀大会で23年ぶりの4強進出に貢献した。

集大成と恩返しの舞台だ。隼瀬は、独自大会へ2つの思いを抱く。「滋賀制覇は秋に立てた目標。達成したい」。そして、より言葉に力を込める。「地域の皆さんにコロナの恐怖の中で勇気を与えたい」。今までの2年半、野球部を見守ってくれた地域へ勇姿を届ける。

5月20日。夏の甲子園大会中止が決まったその日、プロを目指す意思を固めた。「高校野球の締めくくり。ピリオドの打ち方を考えてほしい」。小島義博監督(34)の言葉に背中を押された。昨秋県大会では滋賀学園に4安打完封勝ちするなど、140キロ前後の直球を武器に23年ぶり4強進出に貢献。県内屈指の好投手として名を上げた。「プロを目指しているので、それに向かっていかないと。伊香高で甲子園には行けなかったけど、僕がプロになってみんなを甲子園に連れて行けば良いと思えるようになった」。当たり前の日常が消え、野球ができる時間のありがたみを痛感。限られた時間の中で、挑戦する決意を決めた。

「三万一心」。同校建学の精神だ。地元住民3万人の尽力で学校が設立された。「学校は支え合ってできた。自分が勇気を与えたいという思いがあります」。甲子園につながらない。それでも、目指す理想はしっかりと描いている。【望月千草】