東北の高校野球・代替大会が、1日の岩手を皮切りに熱戦が始まった。今日8日にお届けする高校野球連載「白球にかける夏2020」は、11日に開幕の宮城編です。

勝利を呼ぶのは、女神だけじゃない。お姫さまだって、負けられない。古川黎明ただ1人の女子選手、宮越姫(ひめ)内野手(3年)が、最後の夏に挑もうとしている。規則上、これまで公式戦に出場できなかったが、3年間ユニホーム姿で練習に参加し続けてきた。坂野正明主将(3年)は「姫が練習に参加する時は大きな声を出して、チームを良い雰囲気にしてくれる」と仲間からの信頼も厚い。

黎明中時はバドミントン部に所属していたが、同時に、父好太さんを相手に野球も練習していた。迷うことなく高校では野球部に入り、男子と同じメニューをこなす。練習試合に出場する機会もあって、しっかり野球に取り組んできた。女子も出場可能だった18年の1年生大会では、4試合で15打数8安打と、男子顔負けに打ちまくったこともある。

通常の公式戦はマネジャーが記録員としてベンチ入りするため、部員である宮越は、観客席での応援に回る。その心境を「フェンスが1枚あるだけで景色が違う。一緒に練習をしたのに、選手と心が通じていなかったり、声援が届いていないのかなと思って、結構寂しい」と、悔しさもバネに、野球を続けてきた。

将来の夢は警察官で、白バイ隊員に憧れる。国公立大進学希望のため、昨冬からは1日7時間の猛勉強を始めた。「高校野球に区切りをつけないと受験勉強に集中できず、受験を乗り越えられない」。初戦は12日に平成の森しおかぜ球場(南三陸町)で築館と戦う。代替大会では特例として、3年生に限り3人まで記録員としてベンチ入りが可能だ。最後の夏、宮越が正真正銘、勝利の姫となる。【相沢孔志】