昨秋の東北大会準Vで、夏の県V2を狙う鶴岡東が25-0の5回コールドで鶴岡中央に完勝。第1シードで23日から始まる県大会出場を決めた。第2シード日大山形も山形東に9-0の7回コールド勝ち。公式戦初登録初登板の多田大輝投手(3年)が5安打2奪三振で完封勝利を挙げた。

   ◇   ◇   ◇

日大山形の背番号「1」多田が、高校公式デビュー戦で快投を見せた。試合後、初めて報道陣に囲まれ、「テンポ良く投げて、チームに流れを持ってこようと思った」と、83球の完封劇を緊張した表情で振り返った。直球は平均で球速120キロ台だったが、制球良く打たせて取った。

まさかのエースナンバーだった。大会前のメンバー発表で荒木準也監督(48)から「1番多田」と呼ばれても返事をしなかった。まったく予期していなかった。親元を離れ、酒田から甲子園を夢見て入学も1、2年時は右肩の故障などに苦しみ、ベンチ入りさえかなわなかった。地道にリハビリを続け、ラストイヤーでようやく投げられるようになったが、コロナ禍で夏の選手権がなくなった。荒木監督は「こういう状況なのでストライクを取れ、ゲームを作れる投手が求められる」と、非常事態で迎えた大会で信頼感を優先した。

多田は3回裏2死から2時間26分もの中断を挟んでも、崩れなかった。「日大山形の1番をもらえるとは思わなかったのでビックリした。緊張したけど覚悟を決めて投げた」と腹をくくり、堂々の投球を見せた。「せっかく開いてもらった大会。最後まで楽しんで戦いたい」とこの勢いで突き進む。【野上伸悟】