篠崎の主将・佐藤裕貴捕手(3年)は、打席が回ってくると信じていた。4-10で迎えた9回。2死一、二塁で前打者が右中間へ打ち上げた。が、相手の中堅手と右翼手が交錯し、捕球できず。打球が転々とする間に2点適時三塁打となった。しかし、佐藤裕は初球を投ゴロ。「終わりかあ」と天を仰いだ。次打者の須藤に「すまん」と声をかけると、「お疲れさま」と返された。

昨夏の新チーム発足直後、練習で左膝を痛めた。靱帯(じんたい)損傷だった。昨秋のブロック予選は本職の捕手ではなく、動きの少ない一塁手で出場。2試合で4本塁打と気を吐いた。本大会には出場せず、3年最後の夏に向けて手術に踏み切った。つらいリハビリも、チームメートたちの「待ってるぞ」の声が活力になった。

そこまでして臨むはずだった夏の選手権は、コロナ禍で中止。代替大会という形になったが、実力のある私学を相手に一時は2点リード。佐藤裕は、3回に一時勝ち越しの適時打を放った。だが、6回に打者12人の猛攻を受け、8失点で逆転された。「試合が進んでいくうちにリード不足もあったかなと思います」と責任を背負い込んだ。

敗れはしたが、精いっぱいやった結果だ。「新チームが始まってばかりの頃は、ひどい試合ばかり。今日は途中までいい感じで、最後も誰も諦めなかった。チームが1つになって、終われたかな」と振り返った。【古川真弥】