62年以来の夏制覇を目指す気仙沼は、3時間12分の死闘の末、仙台工に11-10で競り勝った。無死一、二塁で始まった延長10回タイブレークで、1死二、三塁から、左打ちに転向してまだ10カ月の「8番二塁」の川村音晴(おとはる)内野手(2年)が、投手強襲の適時内野安打を放って勝ち越し。6年ぶりの3回戦を突破を果たした。

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9回裏2死二塁から追いつかれても、気仙沼の闘志は衰えなかった。延長10回のタイブレークは無死一、二塁から。揚野耕平監督(32)は3安打と当たっていた7番菊田大輔内野手(3年)に犠打で送らせ、絶好機をチーム一の俊足男に託した。「(川村)音晴は力はないが、コンパクトに打てる。コロナ期間中も毎日何百本も振っていたところを信用した」。川村も「詰まってもいいと言われた。自分で決めるのではなく、次につなげる意識」と、外角直球を振り抜く投手強襲の決勝打。その後も内野ゴロの間に追加点を奪い、同裏に1失点に抑えて逃げ切った。

川村は昨秋までは右打者。50メートル走5秒9の俊足を生かすため、同10月に左打者転向を決意した。揚野監督は「転向する時に『覚悟はあるのか』と聞いた。人の倍以上やらないといけないと話したが、彼は二つ返事でやると」。同冬には監督自らが打撃練習に付き合い、川村の手が血まみれになるほど打ち込みを行った。冬とコロナ禍の春に技術を磨き、努力の結果を大場面で発揮し、揚野監督も目を細めた。

次戦は25日に第1シード仙台育英と対戦する。川村は「全国レベルの強豪なので、ぶつかっていくだけ。台風の目になって、自分たちが強豪を倒したい」。58年ぶり2度目の頂点へ-。気仙沼魂でジャイアントキリングを起こしてみせる。【相沢孔志】