<高校野球栃木大会:矢板中央5-0栃木>◇26日◇2回戦◇栃木県総合運動公園野球場

試合の裏に、高校野球ならではのドラマがあります。「心の栄冠」と題し、随時紹介します。

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矢板中央(栃木)は、ライバル2人の継投で“無安打無得点”を達成した。公式戦初先発で背番号11の右腕、奥山宥記投手(3年)は直球を中心に打者を打ち取り6回を63球、1本の安打も許さなかった。1四球に「詰めが甘い部分です」と厳しい自己採点も「緊張したけど、正直うれしいですね」と笑顔で語った。最終7回を背番号1のサウスポー村野徹平投手(3年)が3者凡退に抑え、チームは5-0で勝利した。

試合開始と同時に降り始めた雨は、次第に強くなった。4回を投げ終えると、1時間50分の長い中断に入った。ベンチ裏で奥山が村野に言った。「いつでも準備しとけよ」。雨と中断による影響が自分の投球ができるかを不安にさせた。しかし、内面には闘志を燃やし続けていた。

現在の3年生は当初、5人の投手がいた。今では2人だけだ。奥山は「徹平とはタイプが違うから、負けられない」と村野を意識してきた。今までベンチで味わった悔しさをバネに、冬にはポール間走を中心に誰よりも走り込んだ。下半身を徹底して鍛え、ぬかるみでもぶれない体をつくり、投げきった。

試合終了後、互いに「ナイスピッチ」と声を掛けてたたえ合った。ライバル2人で勝利につなげた。【沢田直人】