福岡県で、県内屈指の公立進学校の福岡が、福岡大大濠を延長11回のタイブレークの末、サヨナラで下す「ジャイアントキリング」で福岡地区大会決勝を制した。

国立大志望の秀才軍団が、投打にクレバー野球を見せ、優勝候補に粘り勝ちした。筑後地区大会は、西日本短大付のエース右腕浜崎太志投手(3年)が1失点完投で優勝に導いた。

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秀才軍団が、プロ12球団が注目する最速153キロの山下舜平大(しゅんぺいた)投手(3年)を攻略し、福岡地区大会の頂点に立った。息詰まる激闘で迎えた3-3の11回裏1死満塁。代打の切り札が決めた。ムードメーカー的存在の大堂優輝外野手(3年)が、ベルト付近にきた高めの直球をとらえ、人生初のサヨナラとなる中犠飛を放った。

優勝の瞬間、選手は本塁付近でもみくちゃになり、抱きあって歓喜。スタンドでは、関係者もうれし泣きにくれた。準々決勝から3試合連続の逆転勝ち。ペイペイドームで「ミラクル福岡」を完結させた値千金打に、九大進学希望で将来は音楽関係の就職を希望する大堂は「打った瞬間、頼むからできるだけ遠くに飛んでくれと思った。うれしかった」と大興奮だ。

山下は評判通りの好投手だったが、負けてはいなかった。小森裕造監督(40)によると「140キロ後半出ていたが、意外と振れていた。最初はカーブ狙いだったが、ストレートも振れていたので、正しいと思うことをやりなさい」とアドバイス。9回まで0封されたが、延長に入って球威が落ち、制球が甘くなった相手エースを打ち砕いた。

投げては、国立大進学を目指す先発の緒方駿介投手(3年)が、強力打線を手玉に取った。「ペイペイドームでやると決まってからモチベーションになっていた」といい、燃えた。右横手から最速129キロながら、コーナーを突く緩急でスライダー、チェンジアップで翻弄(ほんろう)し、11回を8安打3失点。13三振を奪う粘りで165球を投じ、勝利を呼び込んだ。

決勝に臨むにあたり、相手打者の特徴を分析し、丸裸にしたという。打者により、配球を巧みに変えるクレバーさも実を結んだ。

夏の甲子園に加え、一時は福岡大会もなくなり、3年生の中には受験専念を選ぶ生徒もいた。だが最終的に「中止になってやるやらないで迷った生徒もいたが、結果的に3年生が思い出ではなく、最後まで勝ちに行くことになった」と小森監督。切り替えの早さで代替大会に集中した。さらに福岡大大濠には昨夏3回戦で逆転負けを喫しており、2年越しのリベンジを結実。チーム一丸で鮮やかに有終を飾った。【菊川光一】

◆福岡 1917年(大6)、福岡中として創立の県立校。普通科のみで生徒数は1293人(女子568人)。県有数の進学校で修猷館、筑紫丘と並び「福岡の御三家」と呼ばれている。野球部は春夏通じて甲子園出場はなし。主なOBは19年ラグビーW杯日本代表WTB福岡堅樹(27=パナソニック)、医師でペシャワール会現地代表として医療活動し昨年凶弾に倒れた中村哲氏(享年73)、16年ノーベル生理学・医学賞受賞の大隅良典氏(75)。所在地は福岡市博多区堅粕1の29の1。合屋伸一校長。