仙台工のエース桃井大輝(ひろき、3年)投手が仙台育英を相手にノーヒットノーランを達成し、夏の大会優勝を決めた。9回は足がつるアクシデントに見舞われたが、続投を志願し最後までマウンドを譲らなかった。決勝までの3戦すべてを1人で投げ抜き、3大会連続となる東北大会出場に導いた。同大会は9日に宮城・鹿島台中央野球場で開幕。仙台工は10日に羽黒(山形)と秋田工の勝者と対戦する。

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決勝まで計293球を投げ抜いたエース桃井は、気温30度を超える真夏日に投打で躍動した。6回を投げたところで4度走者を背負うも、要所を締めた投球で安打は許さない。1点リードで迎えた6回1死満塁では中犠飛を放ち、貴重な追加点を奪った。桃井は「サインはエンドランだった。加藤(健太朗外野手、3年)に助けられた」と苦笑いも、以降2回は3者凡退で、優勝が懸かった最終回のマウンドに向かった。

エースを、アクシデントが襲った。先頭打者が三塁失策で出塁、そのとき右ひざ裏をつってしまう。小林孝長監督(34)は「代えるか迷いましたが、本人が『投げたい』というのがあったので」と、続投を決断。最後は2死一、二塁となったが、桃井は「最後まで投げたいという思いがあった。ノーヒットノーランも達成したいという思いで最後は投げた」と渾身(こんしん)の127球目で投ゴロに打ち取る。しかし、一塁送球後に転倒してしまう。それでも正確な送球でアウトを奪い、ノーヒットノーランを達成した。うずくまる桃井に仲間が肩を貸し、支えられながら整列へと向かった。

決勝の投球を桃井は「後ろを信じて、打たれても守ってくれるという意識だった。打たせて取る投球ができた」。奪った三振は4つ。桃井が「嫁(よめ)」と呼ぶ阿部由輝捕手(2年)のミットを信じて投げ込み、好守備に支えられての偉業達成だった。桃井は「3年生最後の大会。みんなで協力して勝ちたい。そして阿部由輝くんと一緒に、宮城県NO・1のバッテリーから東北NO・1のバッテリーになりたい」。無双のエースを軸に一致団結し、東北王者に輝いてみせる。【相沢孔志】