夏の甲子園と地方大会中止による福島県独自大会の決勝が今日7日、ヨーク開成山スタジアム(午前11時開始、無観客)で開催される。14年ぶり2度目の頂点に挑む光南は6日、白河市の天狗山球場で約2時間の前日調整。夏13連覇中の聖光学院も桑折町の同校グラウンドで練習を行った。両校の決勝対決は16年以来3度目。勝者は9日開幕の東北大会(宮城・石巻市民球場)出場権を獲得する。

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夏の福島「14連覇」を目指す聖光学院に、頼もしい助っ人が現れた。光南の左腕・国井対策として、昨年のエース須藤翔さん(東北学院大1年)がひと肌脱いだ。4日に横山博英部長(50)から電話が入り快諾。大学では肘の状態が悪く「プロを本気で目指すなら続けたけど、そうじゃなかった」と、野球部には入らずバレーボールサークルに所属。硬式球を投げるのは1年ぶりだったが、マウンドに上がると本能を抑えられなかった。

昨夏甲子園では初戦で敗れたとはいえ、海星(長崎)相手に好投した。斎藤智也監督(57)はこれまで何度となく、須藤さんを教材としてきた。「決して球が速くなくても、マウンドで一番大事な場面で達観することができる。投手は、潔く打たれるのを覚悟しないとマウンドに立てない。そういう部分でも須藤は今年の投手陣にとって一番の先生になっている」。決勝前に、投球でメッセージを送ってほしかった。

途中、会心のボールで打ち取ると渾身(こんしん)のガッツポーズも飛び出した。「本気でやってもらうには、こっちも本気でやらないと」とカーブ、スライダー、チェンジアップと持ち球を全て使った。

畠中子龍内野手(3年)は「1球1球真剣に投げてもらった。ありがたかった。明日につなげたい」。内山連希主将(3年)は「去年も対戦したけど、すごい速く感じたし、変化球のキレもすごかった」と気温35度の猛暑の中、1時間15分、ぶっ続けで投じた先輩に感謝した。須藤さんは「3年間頑張ってきて甲子園という夢が断たれたのは、かわいそうでしかない。負けて悔いを残すのが一番よくない。結果を恐れず、自信を持って自分の力を出し切ってほしい」と汗をぬぐいながら、後輩たちにエールを送った。【野上伸悟】