夏の福島を“14”連覇した聖光学院が、甲子園交流試合に出場する鶴岡東(山形)に2-1でサヨナラ勝ちし、一番乗りで決勝進出を決めた。同点の9回裏1死満塁から内山連希主将(3年)が中前にはじき返し、劇的なサヨナラ勝利を収めた。

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キャプテン自ら熱戦に決着をつけた。1-1の9回裏1死満塁。聖光学院・斎藤智也監督(57)の頭にはスクイズが浮かんだ。しかし、鶴岡東・小林三邦投手(3年)のスライダーが2球続けてワンバウンドとなり、考えを変えた。「次はストレート。スクイズじゃなく、内山がヒーローになるイメージで、頼むからしっかりヒット打ってくれと」とすべてを任せた。

狙い通りのボールを捉えた打球は中前に抜けた。ガッツポーズしながら一塁に走る内山の笑顔がはじけた。「サヨナラは初めて。それよりチームを勝たせられて最高でした。野球の寿命を少しでも長くしようとみんなで言っていた」。責任感あふれる男は、ヒーローになったことより、もう1試合できることを喜んだ。

対戦した鶴岡東、決勝で対戦するかもしれない仙台育英は、今大会後に「甲子園交流試合」を控える。昨秋の県大会初戦で学法石川にコールド負けを喫した聖光学院にとっては、最後の夏に懸けるしかなかった。昨年まで、夏は13年連続の甲子園出場。内山も甲子園にあこがれ東京からやってきた。しかし選手権は中止に。「最初は何で自分たちの代だけ、と思ったけど、自分たちではどうすることもできない。しっかり受け入れて、今までお世話になった方々に感謝の思いを込めて戦いたい」と誓った。県を14連覇し、「この東北大会が自分たちにとっての甲子園」と決めた。「泣いても笑っても最後の公式戦。自分たちのやってきたことをすべて出し切りたい」と、決勝で集大成の戦いを見せる。【野上伸悟】