これが王者の底力だ。全国高校野球選手権大会の代替となる独自大会の神奈川決勝が行われ、昨夏優勝の東海大相模が相洋と対戦。失策などミスも重なり、7回を終え3点ビハインドも、8回に4点を奪い逆転した。9回にも3点を加え、現チームは県内負けなしで終えた。

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打席に立つ西川に、ベンチから門馬敬治監督(50)の声が響いた。「向こうの方が苦しいんだ。守りに入る。ポイントは、ここだぞ!」。2-5の8回2死満塁。西川は3球で追い込まれたが、不思議と「次はインコース真っすぐ」と勘が働いた。その通りの4球目。それまで外中心だったが、勝負どころの1球を詰まりながら左前に落とした。1点差。神里が2点適時二塁打で続き逆転。縦じまの喜びの叫びが重なった。

苦しい展開をはね返した。7回を終え3点差。主将の山村は「焦りはありました」と打ち明けた。同時に「終盤、必ずチャンスは来る」と信じていた。根拠は「経験です」。17日の大阪桐蔭との甲子園交流試合も7回に逆転。最終的には敗れたが、圧を押し戻してきた蓄積が、そう思わせた。

今年のテーマ「心の耐力」を地でいった。昨夏甲子園は逆転負け。反省から終盤に負けない精神力を目指した。予定にない練習メニューを突然、入れた。門馬監督は「イレギュラーで選手の心を崩す」。想定外に、どう対応するか。瞬時の判断力を養った。新型コロナウイルスという究極のイレギュラーにも「救済措置はある」と鍛錬を続けた。

昨秋優勝に続き、県内負けなしで終えた。門馬監督は「何度も心が折れそうになる。(相洋)加藤君の2ラン。ミスもするし。でも耐えろと。今年のテーマが結果に出た。このチームの完結が今日、できたかなと思います」と感慨深げに締めくくった。【古川真弥】

▽東海大相模・鵜沼(8回1死から二塁打で逆転の足がかり)「絶対に負けられないと思って打席に立ちました。(逆転して)自然と涙が出ました」

▽東海大相模・神里(8回に逆転の2点適時二塁打)「苦しかったけど、練習の成果が出ました。(DeNA外野手の)お兄ちゃんもプレーしている球場。周りから期待されたけど、変に気にせずやりました」