甲子園の優勝投手がそろって登場する。大阪桐蔭で12年に春夏連覇の阪神藤浪晋太郎投手と、前橋育成(群馬)で13年の夏を制した高橋光成投手。ともに初の開幕投手を務めるため、2週間後の本番をにらんで先発する。

史上7校目の春夏連覇を達成した、13年決勝の紙面を復刻。準決勝から2試合連続2安打完封…怪物っぷりを存分に!(所属、年齢、校名など当時)

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<大阪桐蔭3-0光星学院>◇2012年8月23日◇甲子園

新・怪物伝説だ。大阪桐蔭が光星学院(青森)との春夏同一カード決勝を制し、史上7校目の春夏連覇を達成した。エース藤浪晋太郎(3年)が決勝では78年ぶりの14三振を奪い、準決勝から2試合連続2安打完封。9回に決勝史上最速153キロを計測する桁外れの投球で、今大会4本塁打の4番・北條史也内野手(3年)を無安打に封じ、通算9勝目をマーク。東北勢初Vを目指す光星学院の夢を砕いた。

夏最後の勝ち星も、藤浪のものになった。9回2死一塁で大杉を152キロのストレートで空振り三振。駆け寄る森を全身で受け止めた。2010年興南(沖縄)・島袋洋奨(中大)以来2年ぶりに春夏連覇投手が生まれた瞬間だった。

藤浪 甲子園の長い歴史の中で、偉大な記録を残すことができてよかったです!

校歌を歌い、目を潤ませた。お立ち台で、興奮した声を響かせた。「夏勝たなければ意味がない」と話した春とは、違う達成感があった。

2日連続で2安打完封。大会4本塁打の4番北條は2三振を含む4打数無安打。150キロの快速球で追い込み、カットボール、フォークで仕留めた。大会2本塁打の田村からも2三振を奪った。1、2回はイニングをまたいで田村、北條を連続3球三振。出ばなをくじいた。

藤浪 2人を抑えることができて、今までやってきたことを出せました。

センバツ決勝で完投勝利も、2人には打ち込まれた。田村に3安打、北條には2安打2打点。頂点に満足せず、投球フォーム改良に取り組んだ。球速より球質、変化球の制球を上げようと下半身を使うフォームを心がけた。6月終盤、股関節に疲労性の張りが出た。理学療法士が「下半身を使えているからです」と教えてくれた。春に続いて夏も全登板で150キロ超え。9回先頭の代打・村瀬に自己最速タイの153キロの速球を投げ込んだ。光星学院という好敵手がいたから、最後まで最高の投球を貫けた。整列時、北條と「ありがとう」と声をかけ合った。

1年前の8月、優勝を予言された。ライバル近大付(大阪)と練習試合後、相手の藤本博国監督(42)から「甲子園で優勝を狙える」と断言された。逸材と言われる藤浪らが1球1打をおろそかにせず、凡退でも全力で走り、ひたむきに謙虚に野球をやっていた。それが相手監督の胸を打った。「冷静で懸命な藤浪君の姿も印象的でした」。

チームメートが「マイペースで怒った顔を見たことがない」と証言するが、実は強い気性を隠し持つ。中学の体育祭でしつこくからんできた相手と大ゲンカをしたこともあった。理不尽なことは許せなかった。だが「高校に入ってから怒った顔は見せていない」と藤浪も言う。認め合える仲間に巡り会えた。

入学直後に衝撃を受けた。愛媛NO・1右腕の沢田、軟式の快速左腕・平尾が同期。「背番号1は無理かも」と父晋さん(49)に明かした。だから大器は謙虚に着実に力を伸ばした。

今秋ドラフトの目玉になったが、進路は「西谷先生と相談して決めます」と結論は持ち越した。昨年末の進路相談では西谷浩一監督(42)にプロ志望を伝えた。「来年のセンバツに出ることができたなら、人生を左右する大会になるよ」と言われた。春も夏も制し、恩師から「最後に一番いい投球を見せてくれた」とねぎらわれた。「いい投手より勝てる投手になれました」と胸を張った。すべての経験が、この日に続いていた。【堀まどか】