心に残る宣誓で2年ぶりの球児の春が幕を開けた。第93回選抜高校野球大会の開会式。仙台育英(宮城)の島貫丞(じょう)主将(3年)が選手宣誓の大役を果たした。コロナ禍の困難であったり、東日本大震災から節目の10年、昨年のセンバツ中止。3分12秒の宣誓文にすべての思いを込め、言葉で「感謝」「感動」「希望」を届けた。

島貫主将 宣誓。今日ここに、高校球児の憧れの舞台である甲子園が戻ってきました。この1年。日本や世界中に多くの困難があり、それぞれが大切な多くのものを失いました。答えのない悲しみを受け入れることは、苦しくてつらいことでした。しかし、同時に多くのことを学びました。当たり前だと思う日常は、誰かの努力や協力で成り立っているということです。感謝。ありがとうございます。これは出場校すべての選手、全国の高校球児の思いです。感動。喜びを分かち合える仲間とともに、甲子園で野球ができることに感動しています。希望。失った過去を未来に求めて、希望を語り、実現する世の中に。そして、この3月で東日本大震災から10年となりました。日本、世界中に多くの協力や支援をいただき、仲間に支えられながら、困難を乗り越え、10年前、あの日見た光景から、想像できないほどの希望の未来に復興が進んでいます。これからの10年。私たちが、新しい日本の力になれるように、歩み続けます。春はセンバツから。穏やかで、鮮やかな春。そして1年となりますように。2年分の甲子園。一投一打に多くの思いを込めて、プレーすることを誓います。令和3年3月19日、仙台育英学園高等学校硬式野球部主将、島貫丞

雲ひとつない青空の下、島貫主将の力強い声が、聖地に響き渡った。スタンドからは温かい拍手が送られた。島貫主将は「ほっとした気持ち。たくさんの思いが重なる今大会で、みなさんに伝えられたと思う」とやり切った表情で話した。

第2試合で四国王者の明徳義塾(高知)との初戦に臨む。「難しい戦いになると思う。初戦の入りを大事にして、しっかり戦っていきたい」と力を込めた。

 

○…12年センバツで石巻工・阿部主将が選手宣誓を務めた時の監督だった松本嘉次宮城県高野連理事長は、島貫主将の選手宣誓を甲子園で聞いた。宣誓文の「答えのない悲しみを受け入れることは、苦しくてつらいことでした」というフレーズは12年の宣誓文から一部引用したもの。「当日まで知らなかった。12年を思い出しました。すばらしくて感動的でした」と話した。