「弱小」と言われたチームが日本一へと上り詰めた。第93回選抜高校野球大会(甲子園)決勝は、東海大相模が明豊にサヨナラ勝ち。11年以来10年ぶり3回目、春夏通算では5回目の優勝を果たし、令和最初のセンバツ王者に輝いた。タレントぞろいだった1つ上の代とは違い、チーム力が武器。大塚瑠晏主将(3年)を胃腸炎で欠いても、全員で勝ちきった。明豊は初の決勝進出で、あと1歩、届かなかった。

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小島の打球が前進した明豊の遊撃手のグラブをはじくと、東海大相模ナインは一気に飛び出した。2-2の9回1死満塁でサヨナラ中前打。小島は「みんながつないでくれた。絶対決めてやると」と誇らしげ。ヒーローは誰か1人ではなかった。門馬敬治監督(51)は「昨秋、サヨナラ負けで始まったチーム。サヨナラで締めくくることができ、本当にうれしい」。その言葉が、全てを表していた。

センバツ当確目前から暗転した。昨秋関東大会準々決勝の東海大甲府戦。9回に石田が2失点で逆転サヨナラ負けした。打線は5安打1点のみ。山村(現西武)西川(現ロッテ)らタレントを擁した1つ上の代と比べ、小粒の評価。ネットでは「今年は打てない」と書かれた。「弱小」という声も聞こえてきた。

敗戦後のミーティング。門馬監督は「どうなるか分からないが、センバツに出る気持ちで毎日を過ごそう」と訴えた。寮では朝夜、ほぼ全員が自主的に振り込んだ。球場改修やコロナで冬の強化練習が制限された分、基礎練習で堅守を磨いた。監督の次男、1番の門馬は「去年の選手と比べられるのはあったかも知れません。でも、自分たちは投手石田を中心に守りから」。スタイルを貫き、1回戦で東海大甲府にリベンジ。頂点へと駆け上がった。

メンバー外もラインでメンバーを鼓舞。大塚のユニホームも閉会式に並んだ。「全員でつかみ取った優勝です」。監督の言葉が春の空に響いた。【古川真弥】

◆主将不在でV 64年夏の高知は4番の有藤通世(元ロッテ)が初戦の秋田工戦で顔面に死球を受け退場。2回戦の花巻商戦では主将の三野幸宏が頭部に死球を受け、主力2人が入院した。それでも2年生エース光内数喜らの活躍で優勝。優勝旗は坂本幹副主将が受け取り、ナインは病床の2人へ大優勝旗を届けた。