<高校野球和歌山大会:初芝橋本6-3神島>◇17日◇2回戦◇紀三井寺野球場

ハンディキャップをものともせず、力投を見せた投手がいた。神島のエース笠松子龍(しりゅう=3年)だ。先天性四肢障害により、生まれつき左手が不自由。右投げだが右手用のグラブを使い、投球時はグラブを左手に、捕球時は右手にはめ直す。

この日、圧巻のプレーを見せたのは5回2死二塁の守り。打球が一塁線へ飛んだため、笠松はグラブを右手にはめ、一塁のカバーへ。打球を処理した一塁手から送球を受けたが、判定はセーフ。その間、二塁走者が本塁に突入し、初芝橋本に追加点かと思われたが、笠松はグラブを左手に素早く置き換え、本塁に送球。「普段から練習している」と語る見事なグラブさばきで、追加点を阻んだ。

笠松は、父郷士さん(41)の影響で小学3年生のときに野球を始めた。投げ方や打ち方は、似たような選手のプレーを参考にしたという。「(ハンディキャップは)言い訳にしたくない」と野球に励み、最速130キロ超の投手に成長。この夏、背番号1を背負い、神島の主戦を担った。

試合は笠松の力投もあり、接戦に。だが131球を投げ、右足がつった笠松は7回で無念の降板。9回に3点を追加され、神島の夏は終わった。

「この3年間、つらいこともあったが、楽しく野球をすることができた。野球をやってきて正解だった」。試合後、笠松は目に涙を浮かべ、自身の高校野球を振り返った。