<高校野球神奈川大会:横浜清陵5-4横浜商>◇20日◇4回戦◇サーティーフォー保土ケ谷球場

泥だらけのユニホームが、最後まで必死で声援を送り続けた。9回2死二塁、飛球が右翼手のグラブに納まるのを見届けると、土屋博嗣主将(3年)はベンチの中で崩れ落ちた。「もう1回やって、(東海大)相模を倒したいという思いがあった」。2季連続で準々決勝で敗れた王者へ「打倒」を掲げて臨んだ古豪の夏は、4回戦で幕を閉じた。

憧れの選手がいる。横浜商OBで、昨年のドラフトでソフトバンクから2位指名を受けた笹川吉康外野手(19)だ。中本牧リトルシニア時代から昨年まで5年間ともにプレーした先輩は「打撃練習でも1球に対する集中力がすごい。目の色を変えてやっていた」と、お手本だった。

土屋が100人を超えるチームの主将になったとき、そんな先輩から金言を授かった。「甲子園を目指すなら妥協はいらない」。大切なことは何なのか。もう1度練習内容から見直し、アップやダッシュ、キャッチボールなどの精度向上に努めた。その結果、「当たり前のことを当たり前にやることが、1点の差を縮める」と、チーム意識の向上へつながった。

この日も、0-5の劣勢から食らい付いた。だが、あと1点が遠かった。「失敗した過去は消せない。自分を正して声がけし続けたけど、最後まで強いキャプテンにはなれませんでした」と言葉を絞りだした。帽子の裏に刻んだその「王将心」を、今度は後輩が受け継いでくれるはずだ。【勝部晃多】