宮崎商が13年ぶり5度目の夏の甲子園出場を勝ち取った。今春のセンバツに続き春夏連続。初回の4得点をエース右腕の日高大空(そら)投手(3年)と、2年生右腕の長友稜太投手が完封リレーで守った。今月25日に33歳の誕生日を迎えた橋口光朗監督に手作りの、「甲子園への往復切符」をプレゼントしていたナインが、有言実行の宮崎制覇を果たした。

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指揮官との「約束」を果たすために、宮崎商ナインが一丸となった。1回に5番西原太一外野手(3年)の先制打など、打者一巡の猛攻で4得点。投手陣はエース日高が7回、残る2回を2年生長友が0に抑える両右腕の完封リレーで快勝だ。マウンドで歓喜の輪を作り、日高は「夏の甲子園はずっと目標だった。うれしいです」と感極まった。

準決勝前日の25日は橋口監督の33歳の誕生日。野球部には毎年、プレゼントを贈る慣習がある。だが、橋口監督はそのたびに「俺は甲子園に連れていってもらうのが最高の誕生日だから」と言ってきた。考え抜いたナインは今年、「宮商野球部→→→阪神甲子園球場」と記した手作りの往復切符を贈るプランを考えた。

だが、橋口監督は受け取らなかった。「まだこれはいらない。3日後(決勝戦の28日)に受け取るから」。指揮官とナインの間に「約束」ができた。「甲子園への往復切符」を本当の切符にするために、宮崎制覇へ持てる力を結集した。

主将の中村碧人(あおと)内野手(3年)は、決勝当日のこの日、運気を呼ぼうとトイレ掃除をして試合に臨んだ。女子マネジャーたちは「やっと切符が渡せます」と笑った。優勝旗を受け取ると、晴れてナインは橋口監督のもとへ。指揮官も教え子の有言実行に感謝し、感動の誕生日プレゼント贈呈式になった。

宮崎商ナインが保護者へのあいさつを行っていると、バスから降りてきた延岡学園ナインに千羽鶴を託された。「絶対に宮崎へ、優勝旗を持って帰ってきてください」。宮崎で敗れた46校の思いも力に、全国でも頂点を目指す。【只松憲】