高校野球秋季関東大会は2日、準々決勝4試合が行われた。関東・東京のセンバツ出場枠は6。4強に進んだ山梨学院、浦和学院(埼玉)、木更津総合(千葉)、明秀学園日立(茨城)の4校は、来春センバツ出場を確実とした。

◇     ◇     ◇

喜びの涙が、この1年の悔しさを象徴していた。9回裏1死一塁。先発の越井颯一郎(そういちろう)投手(2年)は真っすぐで遊ゴロ併殺に仕留めると、目から大粒の涙があふれた。「この1年、あと1歩で優勝を逃してきた。本当に悔しかった…。うれしいです」。涙で真っ赤な目で、喜びをかみしめた。

自分らしく投げた。3-1で迎えた4回、先頭を一ゴロで打ち取ると、ベンチから伝令が走った。「自分が弱気になったから」。チームメートに鼓舞されひと息つくと、次打者の武井に初球は山なりのスローカーブでストライク。球場のスピードガンが83キロを計測し、ざわつく中で投じた2球目は140キロの直球。緩急を自在に操り、カウント1-2から直球で空振り三振に取った。「スローボールは真っすぐを生かせるし、チームもいったん落ち着くと思う」。自分なりの「強気」な攻めで流れを引き寄せると、終わってみれば6安打1失点の完投勝利。この試合、最速は初回の145キロ直球で、最遅は5回の75キロスローカーブ。70キロの最大球速差で強力打線を手玉に取った。

今春センバツの覇者が目の前に立ちはだかっても緊張はなかった。「自分、メンタルが強いので。今日も緊張せずに自分らしく投げられました」とニヤリ。小学校低学年時は練習試合でも緊張していた野球少年が、父貴之さんからの「いつでも笑顔でポジティブに」という教えで前を向いた。16年以来のセンバツへ。越井は「失点してもチームを勝たせるのがエースです」と、大一番で勝利に導き胸を張った。【保坂淑子】