聖隷クリストファー(静岡2位)が、来季のセンバツ出場を確実にした。2試合連続の9回逆転劇で至学館(愛知2位)を退け、1985年(昭60)の創部以来初の甲子園出場を有力にした。

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3点を追う9回裏。また奇跡が起きた。聖隷は同点とし、なおも2死満塁で5番堀内謙吾内野手(1年)が打席に立った。「迷惑をかけた自分に、みんなでつないでくれた。恩返ししたかった」と奮い立った。直前の9回表には、自らの悪送球を契機に3失点。フルカウントから外角直球に食らい付くと、サヨナラの二塁内野安打となった。

9回に2点差をひっくり返した2回戦(準々決勝)中京戦に続く、劇的な逆転劇が完結。ベンチから次々とナインが飛び出す。上村敏正監督(64)は「僕は何度も諦めかけた。選手の方がすごかった。信じられない。漫画の世界ですね」と繰り返し、号泣する教え子たちを何度もたたえた。

県大会全5試合中4試合で完投したエース弓達(ゆだて)寛之(2年)が、今大会初戦で右肘を痛めて離脱した。この日、先発投手を務めた堀内は「『弓達さんのために』が全員のテーマだった」。大会前の遠征でメンバー外だった小出晴希外野手(2年)が、3安打2打点。公式戦2試合目の登板となった塚原流星(2年)も7回1/3を8安打4失点と力投するなど、新戦力の台頭が光った。

塚原は「誰か1人ではなく、総力で戦えたことが勝ちにつながった」と胸を張った。大黒柱不在が、チームの成長をもたらした。【前田和哉】