秋季東北大会で初優勝を飾った花巻東(岩手)が、新たな歴史を刻む。明日20日開幕の明治神宮大会に初出場。同日の初戦で国学院久我山(東京)と戦う。「4番捕手」で高校通算39本塁打の田代旭主将(2年)は、1年秋から扇の要に定着。打って守ってチームを「神宮初優勝」に導き、出場確実の来春のセンバツに勢いをつける。また、今大会開会式で選手宣誓の大役を務める。

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明治神宮大会の主役は任せろ! 田代の全国デビューは人生初の選手宣誓から幕を開ける。花巻東は高校通算47本塁打の3番佐々木麟太郎内野手(1年)、4番田代を軸にした強力打線が最大の魅力だ。「麟太郎の後を打つバッターとして自分も有名になっていきたいし、東北大会では本塁打が出なかったので、ここぞの場面で打ちたいです」。2人は同校OBのエンゼルス大谷翔平投手(27)の父徹さんが監督を務める金ケ崎リトルシニア時代からクリーンアップを形成。計86発コンビとして神宮でも打ちまくる。

田代は強打だけでなく選球眼も抜群だ。県大会4試合は打率4割2分9厘、1本塁打、6打点、出塁率6割、6四球でチームは62得点。東北大会4試合は打率3割3分3厘、3打点、6四球、出塁率5割5分6厘でチームは27得点と打線における貢献度は高い。

偉大なOBのマリナーズ菊池雄星(30)や大谷も届かなかった秋の東北王者に輝いた。「優勝は新チームが始まったときからの目標なので、達成できたのはすごくよかった」。歴史を塗り替えた安堵(あんど)感はあったが、同時に危機感も芽生えた。チームとして練習中に甘さや少し気がゆるんでしまう部分があり、決勝から1週間後の今月頭に「これで満足したら神宮も春も夏も勝てなくなる」と緊急ミーティング。主将としてナインに思いをぶつけた。もう1度「神宮優勝」の目標を確認し、気持ちを新たに再始動した。

小学6年時の16年に楽天ジュニアとしてNPB12球団ジュニアトーナメントに出場した経験がある逸材は、中学では金ケ崎リトルシニアでプレーし、大谷監督から金言を授けられた。「ストレートのタイミングで打ちにいき、変化球を止まって打つ意識というのを教わり、今にもかなり生きています。そのおかげで逆方向にも強い打球が打てるようになりました」。強打の捕手への礎になった。

花巻東に進学したのは「大谷選手に憧れて、こういう選手になりたい」と思ったからだ。入学後は食トレやウエートトレーニングに注力。パワーアップを目指した。特に食トレにこだわり、昨冬だけで体重は12キロ増。朝、昼は普通の食事量だが、夜は1度の食事でカレー皿にご飯を盛り、カレー、お茶漬け、卵かけ…と味を変えながら4杯を平らげることをルーティンに体をつくった。現在の体重は過去最高の81キロから2キロ軽い79キロをキープする。

コロナ禍で2年ぶり開催となる今大会で、選手宣誓を行う。「人前でのスピーチは緊張して早口になったり、話すことを忘れて止まってしまったり、どちらかというと苦手ですが、今回は楽しみです」。新型コロナウイルスの要素を入れながら全国の球児の思いを代弁する。「神宮大会は初の全国大会で日本一を取れるチャンスが巡ってきたので、秋の全国制覇ができるように頑張りたいです」。強肩強打の大黒柱が先頭に立ち、花巻東の歴史を上書きしていく。【山田愛斗】

◆田代旭(たしろ・あさひ)2004年(平16)4月6日生まれ、岩手県遠野市出身。上郷小2年時に上郷野球スポーツ少年団で野球を始め、捕手や投手でプレー。遠野東中時代は金ケ崎リトルシニアで捕手に専念。花巻東では1年秋からベンチ入り。50メートル走6秒4。遠投120メートル。二塁送球は最速1秒82。180センチ、79キロ。血液型O。右投げ左打ち。家族は父、双子の姉、弟、妹。