異例の事態が起きた。4回無死一塁、広陵の8番大山陽生捕手(3年)が一塁線にバントしたプレーの判定をめぐり、審判がグラウンドでミスを認め謝罪した。プロ野球に選手、コーチなどで40年以上携わってきた田村藤夫氏(62=日刊スポーツ評論家)がこの“歴史的場面”を考察。高校野球の未来に期待を抱いた。

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ショッキングだった。すごいことだと感じた。審判が判定のミスを認めることすら、私の経験の中ではあり得ないことだった。それも甲子園で、場内アナウンスをして「私たちの間違いです。(中略)大変申し訳ありません」と謝罪した。

 

広陵の攻撃。犠打を球審はフェアとジャッジしたが、二塁塁審はファウルとジェスチャーで示し、一塁ランナーの走塁に影響を与えた。

 

本来、二塁塁審が犠打のフェア、ファウルを判定せずともいいのにと感じたが、二塁塁審には思うところがあったのだろう。推測するに、走者に早めにファウルと知らせ、次のプレーに準備させてやろうという親切心があったのだろう。私の目にはそう映った。それが失敗の原因になったのだから、何とも言えない気持ちになった。

 

そして何よりも、過ちを認め、それをしっかりと両チームにも、ファンにも自分の言葉で伝えたことが素晴らしかった。ショッキングというのは、今まで誰もやってこなかった行動を、しっかりやってのけた審判団に対する敬意として、やや誇張した表現になるが、驚きを通り越した感情になったと捉えてほしい。

 

プロ野球ではビデオ映像によるリプレー検証が可能になった。際どい場面は監督がVTRをリクエストし、かなりの部分で透明化された。しかし、高校野球ではビデオ判定は導入されていない。これまでも審判は必死に正確を期してやっていたと思うが、それでも間違いは起きてしまう。

 

今回の場面も、これまでならばミスを認めることもなく、併殺成立でそのまま試合続行となったかもしれない。そして、映像を確認してあとから審判団が糾弾されていたかもしれない。今回の審判団の決意と行動によって、あやふやな判定を巡る審判団の行動に大きな道を示したと感じた。

 

場内アナウンスでの謝罪によって、審判はより一層間違わないように取り組めるようになる。仮に間違えてしまった時、しっかり説明するひとつの先例が生まれた意義は大きい。

 

昨夏、大阪桐蔭-東海大菅生戦が降雨コールドゲームとなった。それから半年足らず、日本高野連は大きくかじを切った。成立前の試合を引き継いで翌日以降に再開する「継続」試合の採用を決断した。

 

少しずつだが、高校野球はいい方向に変わりつつある。私は審判が潔くミスを認め、謝罪して事態を収拾した姿に、大きな期待を感じた。(日刊スポーツ評論家)