金光大阪が木更津総合(千葉)との延長タイブレークを制し、初の8強入りを決めた。13回表に2点を失うも、その裏に押し出し死球でサヨナラ勝ち。エース古川温生(はるき=3年)が160球を投げ抜き、2試合連続完投勝利を挙げた。

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サヨナラ死球を受けた背中を押さえ、金光大阪の福冨がうめきながら一塁に走る。タイブレーク突入の延長13回。2点を失ったその裏に、3点を取り返した。四球で追いつき、死球でサヨナラ勝ち。「逆転で勝てたことがうれしすぎて…。でも体が痛くて立てなかったです」となんとか一塁にたどり着き、ホームで待つナインの輪にのみ込まれた。

古川が懸命に投げた。その姿が、一丸8強を呼んだ。8回、味方の失策で追いつかれ、延長12回も内野の失策で1死二塁のピンチを招いた。それでも崩れない。「しっかり岸本のミットを信じて。そこは信頼」。女房役のミットこそ、苦境での支えだった。横井一裕監督(47)も「心が折れない。素晴らしい投手、素晴らしい人間だなと思えました」と胸を震わせた。途中出場の左翼・岡治が美技でもり立てる。全員で守り、サヨナラで勝った。

前日24日、サッカー日本代表が苦闘の末に、W杯切符をつかんだ。決勝点を演出したMF守田英正(26)はサッカー部のOB。クラブ同士、学校をあげて応援するのが金光大阪のカラー。野球部は初の8強と、うれしい日が続く。

次戦は強敵・近江戦。160球を投げ抜いた古川は「(昨秋)近畿大会の近江戦で170球投げました」と頼もしい。京都先端科学大新3年生の兄・優生さんは、金光大阪の捕手だった19年夏の大阪大会準々決勝で延長14回タイブレークの末、大阪桐蔭を撃破。1-3の14回裏に逆転サヨナラ勝ちと、この日と同じような展開で勝った。だが決勝で履正社に敗退。兄の熱くて悔しい夏を見た弟が、長い春を支える。劇勝後の次戦も、必ず勝つ。【堀まどか】

◆タイブレーク 甲子園では18年春から導入。延長12回を終え同点の場合、13回から無死一、二塁で行う。打順は12回終了後から継続。今大会3度目となり、1大会3度は春夏を通じて初めて。

▽金光大阪・佐々木(延長13回に同点の押し出し四球)「(打席に入る前に)岸本さんから『落ち着け、お前が決めろ』って感じで声をかけていただきました。(金光大阪OBの兄2人からは)絶対に打てよ、楽しめよ、と言われました」

▽金光大阪・岸本(先制打とリードで古川を支える)「古川は投球だけでなく、エースとして引っ張ってくれていた。頼もしかった。13回は、この2点でベンチに帰ろうと声をかけました」