大阪桐蔭が春夏連覇した18年以来、4年ぶり4度目の優勝を果たした。

4本塁打を含む16安打18得点の猛攻で近江(滋賀)を圧倒。3回にプロ注目の松尾汐恩(しおん)捕手(3年)が2戦連発の2ランを放ち、近江のエース山田陽翔投手(3年)をKO。終盤まで攻め手を緩めなかった。今大会11本塁打とし、84年にPL学園(大阪)が記録した8本を更新した。近畿大会、明治神宮大会を含めて昨秋から公式戦20連勝。無敵の常勝校が帰ってきた。

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マウンドの川原がバックスクリーンに向かって両腕を突き上げた。視界にスコアが映る。「18-1」。圧勝だ。優勝だ。大阪桐蔭ナインが輪を作り、人さし指を突き上げた。またも異次元の戦いを演じきった。1戦4発。史上空前のアーチ攻勢で大会11本塁打を重ね、清原&桑田の84年PL学園の記録を塗り替えた。

魂の勝負だった。西谷浩一監督(52)は言う。「山田君が苦しい中で魂を込めている姿を見て、絶対に負けず、こちらもいこうと」。近江のエースは30日に死球で左足負傷。それでも先発してきた。指揮官はブルペンで準備する姿を見た。「思い通りに投げていない。変化球が多くなる」。変化球多投を読み、狙いを指示。1回、打者2人で先制した。

山田を降板させたのは松尾の一撃だ。3回に左翼ポール際に2ラン。2戦連発に「負けずに力で押していこうと。昨年、負けてからの新チームですから」と気合だ。昨夏の甲子園は近江に惜敗。新3年生が雪辱を果たす本塁打を連発した。

正真正銘の「PL超え」になったが、今も仰ぎ見る存在だ。30日、準決勝の前、西谷監督はナインの前で新聞を読み上げた。「今年のチームは隙のないところがいいところだ」。PL学園の名将、中村順司元監督(75)の評論だった。「こうやって見てくれている人がいるよ」と伝えた。98年の就任当初、勝てずに思い悩んだ相手だ。必死に研究した。「ずばぬけた選手が束になって、勝利のために一丸となって戦う」。PL学園は大阪桐蔭のモデルだった。

昨春は初めて初戦敗退し、夏の甲子園は2回戦で姿を消した。この冬、新たに連日400球の連続ティー打撃などをメニューに入れ、力をつけた。星子主将には歴代主将から受け継ぐ言葉がある。「決勝戦の旗を持つのが一番しんどい」。晴れの閉会式で紫紺の大旗を掲げた。ようやく優勝の苦しみを味わえた。星子は「メンバー41人でつかみ取った勝利」と胸を張る。揺るぎなき伝統の力で、秋春夏の3連覇を狙う。【酒井俊作】