岩手の「ミスター0」が8球団スカウトの視察する前で輝きを放った。盛岡中央は盛岡一に2-0で競り勝ち、7日の決勝戦へ駒を進めた。プロ注目の最速149キロ右腕、斎藤響介投手(3年)が、自己新記録となる毎回の17三振を奪って完封。この日の最速は球場表示で143キロをマークした。コロナ禍でチーム活動が一時休止になるなど投げ込み不足で今大会を迎えたが、地区予選3試合で計17回1/3を無失点と快投を続ける。

斎藤が圧巻の奪三振ショーを繰り広げた。盛岡の最高気温は26度。夏を思わせる陽気の中で躍動した。伸びのある直球とスライダーを軸にフォーク、チェンジアップを投げ分けて17K。「今日は少し暑かったが、体が動いて、いいボールがどんどんストライクゾーンにいったので、良かったと思います」。趣味はゲームでインドア派の17歳だが、涼しげな表情で151球を投じ、完封勝利を飾った。

背番号「1」はピンチでも平然と構える。2-0の9回2死満塁、相手7番に対してカウント1-2から138キロ直球で空を切らせ、ゲームセット。8回1死二、三塁でも連続三振と、ここぞの場面ではバットにすら当てさせなかった。「1番を背負っていて、自分が崩れるのはダメなので、気持ちが弱くならないように頑張って投げました」とエースの自覚十分。1四球と制球面もさえ、軽快なバント処理で併殺打にするなど守備でも隙がない。

指揮官の信頼も厚い。奥玉真大監督(47)は「響介がしっかりコンディションを合わせ、いいパフォーマンスをしてくれた」とうなずいた。「真っすぐだけに頼らず、打順やランナー、カウントだったりを把握しながらピッチングできていたのが、完封につながったと思います」と評価した。地区予選では3試合に登板し、計17回1/3をゼロ行進。三振は計32を数え、奪三振率は驚異の16・62だ。

岩手の勢力図を変える。近年2強に君臨する盛岡大付は春夏の甲子園に通算16度、花巻東は同14度出場している。一方の盛岡中央は99年夏以来、聖地に縁がない。それでも、斎藤は「強豪と呼ばれるチームを倒したい」との思いで入学。昨夏からはチームのエースだ。無失点を継続すれば、おのずと勝利が近づく。完全試合やノーヒットノーランの壮大な目標を掲げながら勝負の夏まで「ミスター0」を貫く。【山田愛斗】