北海道文教大付が札幌平岡を3-1で下し、02年春以来、3季通じて20年ぶりの勝利を挙げた。15年夏を最後に休部状態だったが昨春、北海道文教大明清から校名変更し、野球部が復活。同好会時代から支えてきた唯一の3年生で伝令役の前田悠貴(3年)と9回146球1失点完投のエース仁田瑛介(2年)ら24人の1、2年生が力を合わせ、新校名1勝をつかんだ。昨秋初戦まで続いていた公式戦連敗は、31で止まった。

北海道文教大付が、20年の長いトンネルから抜け出した。エース仁田は、最後の打者を空振り三振に切って取ると、力強くジャンプし、石山塁捕手(1年)とハイタッチ。その様子を優しく見守っていた背番号10を付けた前田は「頼もしい後輩たち。みんなが努力し続けてきた結果」。9回8安打1失点と要所を締め粘投した仁田は「先輩の言葉が励みになって、最後まで投げ切れた」と感謝した。

前田は7、8回の2度、仁田の元に、伝令で駆け寄った。7回2死二塁の場面では「走者がいるときに2死になると気が緩む。1回引き締めよう」。8回に1点取られた後にもマウンドに駆けつけた。選手としての出番はなかったが、バッテリーを励まし、陰ながら勝利に尽力した。

前田が入学した20年当時、中村亮太監督(33)と選手3人が同好会として活動開始も、同年秋に2人が家庭の事情で退部。半年間、選手は前田1人になった。現在は主にサポート役に徹するが、消えかけた火を1人でともし続けた前田の存在が、21年春の部復活、そしてこの日の1勝につながった。2安打2打点と打線をけん引した木村幹大一塁手(2年)は「僕らが授業で遅くなると先にグラウンド整備してくれている。部をつくってくれた前田先輩の支えがあるから、今がある」と強い口調で話した。

昨秋までの14人から、今春1年生11人が加わり25人に。今大会の登録には間に合わなかったが、もう1人1年生部員が増える予定だ。前田は「練習環境は大きく変わり、選手層も格段に厚くなった。この1勝はチームにとって大きい。僕には最初で最後の春の大会。1試合1試合全力でやって、もっと上にいきたい」。後輩たちと白星を重ね、新たな歴史をつくっていく。【永野高輔】

◆北海道文教大付の過去成績 前身の札幌明清が88年に男女共学化し、93年公式戦初出場。春は札幌藻岩に1-13、夏は千歳北陽に4-14と、地区初戦敗退。秋に札幌新陽を7-6で下し初勝利。00年から北海道文教大明清に校名変更し、最後の勝利は02年春の地区予選。1回戦で札幌新陽戦を7-3で下し、2回戦は札幌手稲に5-8で敗れた。02年夏から21年春の部復活後、初出場した昨秋札幌地区初戦、東海大札幌戦まで31連敗中(不戦敗1試合含む)だった。