聖地を目指す戦いが、南北海道の函館、室蘭、北北海道の十勝地区で開幕した。十勝地区では昨夏、39年ぶりに北大会を制し甲子園に出場した帯広農が足寄を6-2で下し、道内1番星を挙げた。昨秋は地区1回戦、今春は同2回戦で敗退。好機で確実に走者を送るため1週間、バントだけの練習を続けるなど徹底した取り組みが奏功し、3犠打を絡め6得点を挙げた。今春就任した副部長が2日に逮捕され、動揺と混乱の中、チーム一丸で、連続甲子園へと踏み出した。

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夏連覇へ、帯広農が上々のスタートを切った。1回1死二、三塁、昨夏甲子園でソフトバンク入りしたノースアジア大明桜の風間球打(18)から二塁打を放った主将の清水椋太遊撃手(3年)が中越えに先制の2点適時三塁打。「後ろにいい打者がいるのでつなぐ気持ちで臨んだ」。投げては同じく昨夏聖地で先発登板したエース佐藤大海投手(3年)が8回7安打2失点と粘投し、勝利を引き寄せた。

今春は地区2回戦で帯広大谷に敗れ2季連続で道大会に進出できなかった。1点を追う9回の好機に走者を送れず惜敗。確実に送って得点を取れるようにと、敗戦後1週間“バント漬け週間”を設けた。3年生1球、2年生2球、1年生は3球で仕留めるルールを定め、42人全員決まるまで終わらない。清水は「3時間続くことも。辛抱強くやったことが、試合で生きた」と3犠打を絡め6点をもぎとった。

2日に、今春就任した副部長(当時)が死体遺棄の疑いで逮捕される事件が起きた。同日と保護者説明会があった翌3日の練習を自粛。練習再開後も、無断でグラウンド近くに入る報道関係者が出没し、保護者が見張りをするなど、緊迫した状況が続いた。西川雄太郎監督(34)は「動揺がないわけがない。そういう中で子どもたちが一生懸命、全力疾走してくれた。純粋に野球に取り組んでくれて頼もしいと感じた」と話した。

22年のスローガンは昨年逃した甲子園1勝を意味する“聖勝”だ。清水は「秋、春と地区で負けている僕らは挑戦者。まずは1つずつ」。苦境の中つかんだ1勝をはずみに、再び頂へと登っていく。【永野高輔】

○帯広農のエース佐藤 投げるときの左腕の引き方を改善したことで、低めの制球が良くなった。まだ課題はあるので修正していきたい。