“井~コンビ”が勝利を演出した。南北海道・札幌地区が開幕し、千歳が延長10回の末、札幌稲雲にサヨナラ勝ちし、3年ぶりの夏1勝を挙げた。1点ビハインドの9回1死二塁、主将の井坂陸王(りお)三塁手(3年)が左翼へ適時二塁打を放ち同点。10回2死から、井向陽大(いむかい・ひなた)左翼手(2年)が左翼線二塁打で出塁し、次打者の遊ゴロが相手の送球ミスを誘い、ヘッドスライディングでサヨナラ生還を果たした。

9回に貴重な同点打を放った井坂は「4回に守備でミスをしてしまったので打って取り返したかった。ほっとした」と話した。井向は「先輩とまだ試合ができてうれしい。勝って涙を流すのは人生初めて」と感極まった。井坂が2安打1打点、井向は3安打2打点と“井~場面”で安打を重ね、チームの全3打点を2人でたたき出した。

中盤までは決して“井~流れ”ではなかった。3回に3点を先制も6回に2点、7回1点と、いずれも無安打で奪われ追いつかれた。8回に逆転を許すと全校応援の相手スタンドは大盛り上がり。渡辺貴友監督(49)は「完全アウェー。じわじわ苦しめられる中、9回にキャプテン、そして10回は井向がいいところで打ってくれた」とねぎらった。

春は札幌静修に7-9で競り負け。井坂は「守備の細かいミスが目立ってしまった」。夏に向け捕球から送球を終えるまで4秒で締める練習を繰り返し、走者がたまっても焦らず確実にアウトを重ねる意識を磨いてきた。結果的に4失策も、地道な取り組みは3点差逆転されてもあきらめない姿勢にあらわれた。渡辺監督は「ミスもありますが、粘り強くやってくれたことが収穫」と喜んだ。

渡辺監督は「井坂は気持ちの強さがある。井向は本番に強い子」と言う。精神的支柱と2年生唯一のレギュラーを軸に、72年以来50年ぶりの南大会を狙う。【永野高輔】

●先発し3回3安打3失点で降板した札幌稲雲の池浦怜央(れお)主将(3年) 投球は満足いくものではなかったが、ベンチでみんなに「楽しもう」と伝え続けた。3年間で一番熱い1日だった。

●4回に好返球で補殺を記録した札幌稲雲・天野診治朗右翼手(2年) 練習でやってきたことが試合で出せた。欲を言えばヒットを打って、先輩ともっと野球がしたかった。