岡山大会では、今夏限りで勇退する長沢宏行監督(69)率いる創志学園が、4年ぶり3度目、春夏5度目の甲子園出場を決めた。監督の助言で横手投げに転向したエース岡村洸太郎投手(3年)が5安打8奪三振で完封した。

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ラストボールがミットに収まると、長沢監督の表情が緩んだ。見逃し三振で、創志学園の監督として4年ぶり3度目、春夏5度目の甲子園出場が決定。「人生で一番いい試合やったと思います」と感無量でかみしめた。今夏を最後に勇退し、東海大相模前監督の門馬敬治氏(52)にバトンを引き継ぐ。最高過ぎる花道を子どもたちが作ってくれた。

躍動したのはサイド右腕の岡村洸太郎投手(3年)だ。140キロ中盤の速球を武器に5安打8奪三振で倉敷商を完封。「監督がベンチから『軸足に重心を乗せろ』と言ってくれていた」。気負う投球を察知した指揮官の助言で低めに制球し、9個の0を並べられた。

岡村は前回同校が聖地を踏んだ18年、甲子園で躍動した西純(現阪神)に憧れて入学。1年冬までは上手投げで、当時の球速は120キロ台後半だった。そんな時、長沢監督が「横で投げてみたら」と転向を助言。最速は145キロにアップし、今夏は全試合先発で勝利を導くエースに成長した。

長沢監督はそんな右腕の気持ちの強さを評価する。「優勝するときは良いピッチャーがいる。それがないと甲子園に行ってもダメだと思います」。05年センバツに初出場で準優勝した神村学園(鹿児島)監督時代も含め、6度聖地を踏んだ指揮官ならではの甲子園必勝法に岡村も当てはまる。

96年のアトランタ五輪で女子ソフトボール日本代表ヘッドコーチを務めるなど異色の経歴。高校野球では、情熱的な指導で西純や楽天高田萌生ら多くのプロを輩出し、今も教え子に慕われる。「『先生には絞られた』とか、悪口ばっかり(言って)くるんです。男同士なんで。大笑いしてます」とうれしそうに話した。

部員たちの目標は「監督さんを日本一に」。春の中国王者だけでは満足しない。長沢監督との熱いラストサマーが、甲子園に舞台を移す。【波部俊之介】

◆長沢宏行(ながさわ・ひろゆき)1953年(昭28)4月26日生まれ、兵庫県出身。市西宮から日体大。夙川学院(現夙川)でソフトボールを指導し、96年のアトランタ五輪では女子ソフトボール日本代表ヘッドコーチを務めた。03年に神村学園の監督に就任し、05年センバツ初出場で準優勝。環太平洋大監督を経て10年から創志学園監督に就任し、創部1年目でセンバツに導いた。両校の監督として春4度、夏は今回が3度目の出場。教え子には元巨人の野上亮磨、阪神西純矢らがいる。

◆創志学園 1884年(明17)に創設の私立校。1998年、女子校から共学に。2010年から現校名となり、野球部も創部。生徒数は746人(女子469人)。部員数は66人(女子1人)。甲子園出場は春3度、夏も3度目。主なOBは阪神西純矢、楽天高田萌生、日本ハム難波侑平ら。所在地は岡山市北区下伊福西町7の38。今井康好校長。

▽阪神西純矢投手(創志学園OB)「長沢監督の最後の夏ですし、ぜひ甲子園に出場してほしいと、ずっと思っていました。試合も見ていましたが、エースの岡村君を中心に、チーム一丸となって戦い抜いた姿はとても感動しましたし、自分も力をもらいました。甲子園出場の夢がかなって本当によかったですし、甲子園でも思う存分楽しんでほしいです」

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