<高校野球熊本大会:九州学院6-0秀岳館>◇26日◇決勝◇リブワーク藤崎台球場

熊本大会決勝は、第1シードの九州学院が秀岳館を6-0で下し、15年以来7年ぶり9度目の夏の甲子園出場を決めた。ヤクルト村上宗隆内野手(22)の弟で、プロ注目の4番、慶太内野手(3年)が3回に決勝打。兄が16、17年と決勝で負けた宿敵にリベンジを果たした。

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ドラマのような展開だった。主役は九州学院の村上慶だった。0-0の3回1死一、三塁で左前適時打。「何が何でもチームに貢献したかった」と、外角のボール球を流し打った。今大会唯一の打点が決勝点。しかも相手は兄宗隆が2、3年時に決勝で敗れた秀岳館だ。「お兄ちゃんが2年連続で負けた秀岳館。自分が絶対に借りを返してやろうという気持ちでした」。兄の雪辱を、顔も構えもそっくりな弟が果たした。

苦しかった。4番に座りながら準決勝まで0打点。第1シードの主砲、そして「村上宗隆の弟」という看板があり、厳しいインコース攻めや、四球で勝負を避けられる場面が目立った。「重圧というか、考えるものはありました。4番を打たせてもらってるけど貢献できてないな、と」。着実に甲子園は近づいていた。しかし心の底から喜べなかった。幾多も落ち込んできた。

それでも周囲に支えられてきた。兄宗隆からは「とにかく頑張れ。勝負には勝ちか負けか、どっちかがある。勝ちにしろ、負けにしろ、気にせず自分たちのプレーをやったらいい」と前日に激励を受けた。チームメートからは「慶太、切り替えよう」と励まされてきた。打席に入る前には、平井誠也監督(50)から「打ちたいんだろ? 思い切って、楽しんで振ってこい!」と背中を押された。「開き直りました。この大会は1打点で終わってしまったけど、貴重な1打点だったと思います」。

記念撮影の前には、平井監督に「先生! やりました!」と、真っ先に叫んだ。「お兄ちゃんに勝てるところは現時点では絶対にない。だけど、声には自信あります。勝てるのは明るいところじゃないですかね?」。兄宗隆は1年生だった15年の甲子園で初戦敗退。九州学院としては8強に進んだ10年以来となる夏の聖地勝利を目指す。慶太は「甲子園、頑張ります。悔いのないようにやりたいです」と、聖地でも兄のリベンジを誓った。【只松憲】

◆九州学院 1911年(明44)にキリスト教会によって創設された私立校。普通科のみで生徒数は1028人(女子467人)。野球部は創立と同時に創部で、部員数は70人。甲子園は春6度、夏は9度目の出場。夏の63年、10年の8強が最高。主な卒業生はヤクルト村上宗隆、阪神島田海吏、中日溝脇隼人、元西武高山久、元ソフトバンク吉本亮ら。所在地は熊本市中央区大江5の2の1。阿部英樹校長。

◆村上慶太(むらかみ・けいた)2004年(平16)11月11日生まれ、熊本市出身。託麻南小4年から「託麻南小野球部」で軟式野球を始める。長嶺中では硬式の「熊本東リトルシニア」に所属。ポジションは一塁と三塁。3兄弟でヤクルト村上は2番目の兄。九州学院では1年秋からベンチ入り。高校通算6本塁打。好きな食べ物は焼き肉。趣味はサッカーゲームやメジャーリーグ鑑賞。応援している球団はヤクルト。189センチ、94キロ。右投げ左打ち。