日本文理が劇的なサヨナラ勝ちで3大会連続12度目の甲子園出場を決めた。初出場を狙う帝京長岡との激闘を延長11回、2-1で制した。1-1の11回裏2死一、三塁で5番玉木聖大右翼手(3年)が右中間に運び勝負を決めた。プロ注目の本格右腕対決。日本文理の田中晴也投手(3年)は151球、3安打1失点の9奪三振で完投。帝京長岡の最速147キロ、茨木秀俊投手(3年)とのライバル対決に投げ勝った。

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ただ、うれしかった。本塁付近に集まるナインの笑顔が目に入った。「打てて良かった」。玉木は勝利を、そして甲子園を実感した。三塁走者の早川優成二塁手(3年)が生還して勝利が決まってもダイヤモンドを1周。公式戦初のサヨナラ打に「慣れてなくて」と照れ笑い。待ち受けるナインの輪に飛び込んだ。

初球を狙った。1-1の11回裏2死一、三塁。帝京長岡・茨木秀のチェンジアップを捉え右中間を破る。前打者の4番高橋史佳左翼手(2年)が申告敬遠されていた。ここまで3三振の玉木は「自分で勝負するだろうって準備はできていた」。近寄ってきた田中の言葉が力になった。「お前が一番チームで振ってきたんだから自信持っていけ」。

昨夏甲子園は6番で初戦2回戦、福井・敦賀気比(6-8)戦で左翼に2ランを放った。その後も長距離砲として期待されたが当たりが止まり、今春は県大会準決勝、決勝で先発を外れた。全体練習後、毎日1時間近く素振り。そんな玉木をナインは信じていた。「思い切って振った」。励ましに決勝打で力強く応えた。

チームの中心には田中がいた。151球の熱投は「茨木君に負けられない」というエースの意地。それ以上に「仲間のために仲間を信じて投げた」。11回を3安打1失点。7回に1-1に追いつかれたが、8回以降は走者を許さなかった。

アクシデントにも耐えた。26日準決勝・北越戦で右手人さし指のまめがつぶれた。この日もにじんだ血がユニホームの右太もも部に付着し、染みになった。この日最速は145キロ。自己最速150キロには届かないが要所で力を振り絞った。「内野も外野もしっかり守ってくれた」。大黒柱がバックを信頼し投げ切った。

試合後の校歌演奏時、鈴木崇監督(41)は目を潤ませた。「OBとしても監督としてもすばらしい選手に恵まれた」。決勝の延長戦は延長10回、日本文理が2-1でサヨナラ勝ちした11年新潟明訓戦以来。日本文理は14年の決勝でも関根学園に9回、4-2でサヨナラ勝ちしている。伝統を受け継ぎ、粘り強く戦ったナインに指揮官は最大級の賛辞を送った。

県勢は17年の日本文理を最後に甲子園初戦敗退が続く。「目標は全国制覇。改めてやり直す」と竹野聖智主将(3年)。チームが1つになり、最高の形で締めくくった新潟の夏を快進撃の始まりにする。【斎藤慎一郎】