愛工大名電(愛知)が星稜(石川)との強豪対決に15安打14得点で大勝した。

地方大会で打率5割超の7番・美濃十飛(しゅうと)外野手(3年)は、4打数4安打6打点でけん引。6月に心不全で急逝したチームメートの瀬戸勝登(しょうと)さんとはいつも一緒にいた。天国の仲間にささげる白星になった。

   ◇     ◇    ◇

親友の思いも胸に4安打を放った。初回に3点を奪いなお1死二、三塁。中前へ2点適時打を運び、塁上の美濃は天を見上げた。「打たしてくれてありがとうということで、見上げました」。ここから4打席続けて快音。2回までの10得点のうち5打点を稼ぎ、計6打点で勝利に導いた。

6月に急逝した瀬戸さんとは仲が良く、一番一緒にいたという。「朝食後の20分で歯磨きを毎日一緒にして、雑談していた。親友に近い存在だった」。右翼の守備では瀬戸さんのグラブを左手にし、瀬戸さんの母手作りのミサンガをつけた。「瀬戸と一緒に戦うぞという気持ちでやることが大事だと思ったので、グローブにつけています」。2人分のプレーだった。倉野光生監督(63)は「瀬戸とはすごく仲が良く、2人で打ってるヒットだなと感じた。努力のたまもの。去年秋までの打撃とは全く違う」とその成長を喜んだ。

現広島の田村を擁した昨夏の甲子園で美濃はベンチ外。「昨年はスタンドで見ているだけだったので、悔しい気持ちが強くて、1年間しっかりやった」。OBイチロー氏の「人は変化を恐れてはいけないよ」という言葉に感化され、勇気を持ってフォーム改造に着手。大きく上げていた右足を下げ、ぎりぎりまで球筋を見られるようにした。「短所をなくすということで、体に引きつけて、逆方向に打てるようにしてきた」。今夏地方大会で刻んだレギュラー陣トップの打率5割6分に、1年間の努力が詰まっている。

「瀬戸と一緒に最後まで戦い貫くのは当然ですけど、これからの試合も愛工大名電らしく、伸び伸びとやりたい」。美濃がチームの思いを代弁した。【波部俊之介】

 

【写真もたっぷり】近江が鳴門破り初戦突破 鶴岡東、愛工大名電、八戸学院光星も2回戦へ/甲子園詳細