秋春夏3連覇確率は83%!! 大阪桐蔭は背番号1の川原嗣貴(しき)投手(3年)が甲子園初完封で春夏連覇した18年以来、4年ぶりの夏8強を決めた。昨夏の甲子園では救援失敗して地獄を見た右腕は「挽回力」で背番号1を任されるまでに成長した。単独投手の夏完封は同校では8年ぶり。昨秋の明治神宮大会、3月センバツから続く3登頂が現実味を帯びてきた。

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188センチの長身がひときわ大きく映った。甲子園のマウンドは川原のワンマンショーだった。1回1死二塁で中軸と対決。3番瀬谷をカーブで空振り三振に仕留め、1年生4番の片井には力勝負だ。「最初は三振を狙おうと思った」。速球で空を切らせた。敵の主砲をねじ伏せる。勝負を制するセオリーに徹した。

最速148キロ右腕が仁王立ちした。6回終了時点で93球。試合終盤も140キロ台中盤の球威で振り遅れを誘った。継投の腹案があった西谷浩一監督(52)は戦況を読んだ。「真っすぐに合っていない。代える方が向こうは喜ぶ。夕方で涼しい。あと20、30球は投げられる」。近年は投手リレーが主流で、同校で単独投手の夏完封は14年田中誠也以来、8年ぶり。頂点までの残り3戦を控え、前田悠伍投手(2年)や別所孝亮投手(3年)を温存できたメリットは大きい。

涙を自信に変えた。昨年8月23日の甲子園。近江戦で救援に失敗し、夏を終わらせてしまった。大会後、母綾子さん(45)と話す電話でも沈み込んだ。「『投げるのが怖い』というくらい、苦しんでいた」と母は思い起こす。普段は弱音を吐かないという。受話器越しの息子に伝えた。「アンタがしんどいときは親もしんどいんや。やれることをやろう」。両親の愛、仲間の支えで立ち直った。

試行錯誤し、春以降、ゆったり左足を上げる投球フォームで安定感が増した。課題も克服する。夏初陣の旭川大高(北北海道)戦に先発したが、球が浮いて3点のリードを許した。「とにかく低め低めに。上体を残して体の前で腕を振り切る。甲子園で9回投げられて、大きな自信になる」。上体の突っ込みを抑える動作に修正し、躍動した。夏8強入りは7度目で、過去優勝は5度。優勝確率は実に83%に跳ね上がる。大黒柱が力投し、同校初の秋春夏3連覇に向けて視界は広がった。【酒井俊作】

◆川原嗣貴(かわはら・しき)2004年(平16)6月30日生まれ、大阪府吹田市出身。北摂シニアでジャイアンツカップ出場。関西選抜メンバーで台湾遠征を経験。大阪桐蔭では2年春の府大会からベンチ入り。昨夏の甲子園は近江戦の同点で救援も、決勝打を浴びて敗戦。今春センバツは先発と救援で3試合登板し、18回を3失点に抑えて優勝に貢献。家族は両親と弟。188センチ、85キロ。右投げ左打ち。

 

▽大阪桐蔭・松尾汐恩(しおん)捕手(3年=川原の完封に)「気持ちのこもった球をしっかり放ってくれました。1巡目は直球で押して、相手もいやがっている感じはあった。でも一辺倒にならず、2巡目からはあえて変えていこうと思いました」

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