近江(滋賀)は5戦連続先発のエース山田陽翔投手(3年)が7回途中5失点で降板し、2季連続の甲子園決勝を逃した。

同点の6回1死満塁。森凜琥(りく)内野手(3年)に148キロ速球を右翼線にはじき返され、勝ち越しの2点適時二塁打を浴びた。さらに、7回は仲井慎投手(3年)に中犠飛を打たれ、さらに追加点を許した。もう限界だった。

試合中、山田は多賀章仁監督(63)に首をかしげて言った。「エンジンがなかなかかからない」。先発を重ね、疲労は極限に達していた。最速148キロを計測したが、序盤から球は浮き気味で本来の球威ではなかった。「四球がすごく多くて負けに直結した。(下関国際は)打者1人1人が考えていて、すごく投げづらかった」と振り返った。

この日は132球の熱投を見せた。7奪三振で、甲子園通算115奪三振までのばした。箕島(和歌山)石井毅(元西武)を抜いて、金属バットが導入された1974年(昭49)以降では単独3位に浮上した。今大会最速の148キロをこの日も計測した。7四球を与え、本調子ではなかったが全力を尽くした。

滋賀県勢初の春夏通じて甲子園初優勝まであと2勝だったが及ばず。敗戦後、多くの選手が涙を流すなか必死にこらえた。ナインに言った。「胸を張ろう」。主将でエースで4番。最後まで大黒柱の誇りを失わなかった。「全国の高校で4校だけ。優勝を目指していたし、悔しい思いがある。でも、素晴らしい成績には変わりない」と話した。

今秋ドラフト候補に挙がるなか、プロ志望届の提出を明言。「どちらでも準備しています。自信を持っているのは投手かなと思います」。基本的に投手としてプロで戦いたい考えだが、打者で評価している球団もある。指名後に決断することになりそうだ。今大会は644球。聖地通算11勝。近江の剛腕が甲子園に残した伝説は、いつまでも色あせない。【酒井俊作】