父譲りの長打力を見せた。今夏8強で、10度目のセンバツ出場に挑む慶応が上矢部と対戦。西武、巨人などで通算525本塁打と活躍した清原和博氏(55)の次男・勝児(かつじ)内野手(1年)が「8番・三塁」で先発出場。2打数無安打1四球で迎えた6回2死満塁の第4打席、左翼ポール付近へ高校通算7本目で公式戦初本塁打となるグランドスラムを放った。試合は6回コールド14-1で慶応が勝利した。

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父もつけた「背番号5」の清原が満塁の好機に笑顔で打席に入った。力感のない構えから、ゆったりと足を上げると、肩口から入ってきたカーブを振り抜いた。左翼ポール付近へ推定100メートル弾。3人の走者が待ち構える本塁に、満面の笑みを浮かべて生還した。

高校通算7本目、公式戦初本塁打に「今日はいろいろと迷惑をかけたので、ホッとしました」と安堵(あんど)の表情。2回1死一、三塁の第1打席。スクイズのサインをセーフティースクイズと勘違いし、ショートバウンドの投球にバットを引いた。捕手が捕球出来ず、三塁走者は生還出来たが反省が残っていた。悔しさを結果ではね返した。

今秋、初のメンバー入りでスタメンを勝ち取った。しかし不調で打順は8番にまで下がった。打席に入る前、父のタイミングをゆったりと取る打撃を思い起こした。ここにチームスローガンである「センター返しは恩返し」のイメージを加え、打席に臨んだ。意識の効果は強く、直球の後の緩い変化球でもファウルにせず、左翼ポールを巻くことが出来た。

夢はプロ野球選手。理想の打者像を問われると「やっぱりお父さん」と、間髪入れずに答えた。「ライトにもどこにでも本塁打が打てる。チャンスにも強い。そういう打者になりたい。目標はお父さん」と力を込めて話した。森林貴彦監督(49)も「逆風の中、押し戻されて左飛かなと思ったら…。チームでも飛ばす力は何本かの指に入ります」と認めるなど、強打者の遺伝子を引き継いでいる。

勉学との両立が厳しい慶応。わずかに単位が足りず、2回目の1年生を過ごしているが「1年生らしく、元気にやっていきます」と前向きだ。父の存在感から注目を浴びることも多いが「名前に恥じないように、自分らしく。泥くさく貢献したい」と胸を張った。成長著しいスラッガー清原が、秋の神奈川で躍動を誓った。【阿部泰斉】

◆清原勝児(きよはら・かつじ)2005年(平17)5月1日、東京都生まれ。幼稚園年長から野球を始め、小学時代はオール麻布でプレー。小6時、ジャイアンツジュニアに選出。中学時代は世田谷西シニアでプレーし、慶応では今秋からメンバー入り。名前の由来は「勝つ、こどもで勝児」。173センチ、80キロ。右投げ右打ち。兄は慶大2年の正吾内野手。

○…兄の正吾内野手(2年=慶応)は東京6大学の慶大野球部でプレーする。小3から野球を始めたが、中学はバレーボール、高校はアメフト。高3の時に野球の練習をする父と弟の姿に刺激を受け、大学から再挑戦した。リーグ戦の出場はまだないが、新人戦にあたるフレッシュトーナメントに出場。今春同トーナメントは4番を任されるなど、強打者として成長著しい。