3回戦屈指の好カード、今夏覇者・能代松陽と今春王者・秋田商の一戦は、5-0で能代松陽に軍配が上がった。エース右腕・森岡大智(2年)が1安打完封。6回以外をすべて打者3人で終える圧巻の投球で、秋田商打線に全く隙を見せなかった。

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大舞台での経験が新エースを強くした。今夏甲子園の聖望学園(埼玉)戦で、森岡は0-3で迎えた5回から救援登板。逆転を目指したが、4回5失点(自責点4)でさらに差を広げられた。当時を思い返し、森岡は「甲子園では力が入り過ぎて球が浮いてしまった」。浮いた球は全国レベルでは簡単に打たれてしまうことを身をもって知った。「この秋から、低め低めを意識して投げるようになりました」。意識改革は功を奏し、この日は直球もスライダーも好調。しっかりとコースに決まり、相手打線を手玉に取った。6回には1死から3連続四死球と荒れ、満塁のピンチを招いたが、続く相手2番の三ゴロを野手陣が落ち着いて処理して、三-捕-一の併殺を完成。この日は3併殺と堅守にも支えられた。

野手陣の援護は併殺だけにとどまらなかった。6回裏1死満塁の場面で、女房役の柴田大翔捕手(2年)が左方向への2点適時打。柴田は「高めのストレート。ボール球でしたが、『ストレートは全部いってやろう』と強く振りにいきました」と振り返った。待望の追加点に森岡は「(6回表までは)2点差で苦しかったが、柴田が打席に行く前に、チームのみんなに『森岡を助けるぞ』と声をかけてくれた。それで打ってくれたので本当に頼もしかったです」。女房役の有言実行の1発に励まされ、7回以降しっかりと立て直した。

秋連覇まであと3勝。森岡は「相手によって変わることなく、自分らしいピッチングをキャッチャーと一緒にできればなと思います」と次戦を見据えた。今夏つかめなかった能代松陽での「聖地1勝」実現に向け、新エースは成功体験を積み重ねる。【濱本神威】