プロ野球のドラフト会議が、20日に都内で開催される。静岡県内の高校生では、常葉大菊川の最速150キロ右腕・安西叶翔(かなと)投手(3年)と富士宮東の大型遊撃手・勝又琉偉(るい、3年)が、NPB入りを目指してプロ志望届を提出。これまでに、複数球団から調査書が届いた。プロ入りを夢見る若武者2人が、吉報を待っている。【前田和哉】

■14年桑原樹以来

運命の日が迫る中、常葉大菊川の安西は素直な心境を口にした。「楽しみでワクワクするという気持ちもあるけど、(結果は)当日にならなければわからない。もちろん、不安もあります」。胸中には、複数の感情が入り交じっていた。

スリークオーターとサイドスローの中間ほどの位置から腕を振る独特の軌道が武器の右腕。部活動引退後も休まず練習を続けてきた。今秋にはスカウトの前で約20球の速球を投げ、自己最速タイの150キロを複数回記録。「速いだけでは意味はないけど、成長を感じる1つの基準にはなる」。プロ入り後を見据えた準備にも余念がない。

調査書は全12球団から届いた。同校では、2014年に広島から5位指名を受けた桑原樹(たつき)内野手(26=21年現役引退)以来のドラフト指名に、期待が膨らむ。安西は「光栄なこと。どの球団でも、チャンスをくれたチームで勝利に貢献できる投手になりたい」と目を輝かせた。

高校最後の公式戦となった今夏の全国選手権静岡大会はコロナ禍がチームを直撃し、4回戦敗退。安西も京都市内の自宅で戦況を見つめることしかできなかった。「プロで活躍して、悔しい経験がプラスになったと思えるようにしたい」。憧れの世界への思いは日増しに強くなっている。

◆安西叶翔(あんざい・かなと)2004年(平16)11月13日、京都府生まれ。小1から北白川ベアーズで野球を始め、中学時代は京都ベアーズ所属。右投げ右打ち。家族は両親と兄、妹。186センチ、86キロ。血液型A。

■脚力50メートル5秒9

富士宮東の勝又は、ドラフト会議を心待ちにする。「不安もあるけど、それ以上にワクワクしている」。同校出身のプロ野球選手は、社会人の東邦ガスなどを経て中日でプレーした菊地正法(まさのり)投手(38=16年現役引退)1人。高校からドラフト指名となれば、1992年(平4)の創部以来初となる。

188センチの長身に加え、50メートル5秒9の脚力も兼ね備える勝又。今夏の静岡大会でも活躍が期待されたが、無安打と実力を発揮できずに3回戦で敗れた。「力み過ぎてしまった。悔しい結果に終わり、このままではダメだと思った」。引退後も練習を継続。時には昼休みも利用して筋トレに励むなど、連日汗を流している。

今月2日に行われた富士宮北との練習試合では、後輩たちに交じって“特別出場”。木製バットで左中間と左翼へ2本塁打を放った。「まだまだ課題は多いけど、少しずつ木製に慣れてきた実感はある」と一定の手応えも得た。

調査書は6球団から届いた。高校ではグラウンドのトイレ掃除を続け、今では日課になった。「今は掃除をしないと落ち着かなくなった。ドラフトの日もやろうと思っています」と笑った。いつもと変わらない1日を過ごし、運命の瞬間を待つ。

◆勝又琉偉(かつまた・るい)2004年(平16)10月7日、富士市生まれ。小1から大淵少年野球スポーツ団で野球を始め、大淵中では軟式野球部でプレー。右投げ右打ち。家族は両親と兄。188センチ、78キロ。血液型A。

<明大・村松らもプロ志望届>

安西、勝又のほか、明大で主将を務める村松開人内野手(4年=静岡高出)、立正大主将の奈良間大己内野手(4年=常葉大菊川高出)、中京大の漢人(かんど)友也投手(4年=常葉大菊川高出)、山梨学院高の榎谷礼央投手(3年=浜松市出身)などもプロ志望届を提出。社会人ヤマハの佐藤廉投手(23)も、ドラフト候補に挙がっている。