今夏の兵庫大会で約36年にわたる監督生活に区切りをつけた関西学院・広岡正信前監督(68)の記念試合が行われ、多くのOBが球場に駆けつけた。ベンチでは最後の指揮を執り、今秋近畿大会準V校を相手に執念を見せた。

劣勢にも最後まで闘志を燃やした。終盤には代打攻勢や細かな継投を繰りだし、8回には4点を返してみせた。広岡氏は「振り返りにくい試合でしたが、何とか複数点取れて少しでも期待に応えられたかな」と笑った。

試合中には勝負の厳しさも選手に伝えた。「0-6までは許容していましたが、それを超えたのでちょっと怒りました。勝負やからね」と真剣勝負に徹した。さらに、プレーについても助言。「報徳の子が打った瞬間に走ってセーフになって、うちの子は当たり損ないを見てから走るとか、そこの差が大きいんやでと言いました。単に打つとか投げるとかだけじゃなくて、報徳の子はバッテリーの隙をついてサードに行ったり。そういうことが野球」。勇退したとはいえ、選手育成の情熱は衰えなかった。

試合後にはグラブを持参した教え子たちに広岡監督が自らラストノック。1人1人の名前を確認しながら気持ちを込めてノックを打った。

報徳学園と関西学院を率いて甲子園に3度出場。長きにわたって指導を続けてきたが、次世代へバトンを渡す。「こんな形で最後を迎えることができて本当に幸せです。何年やってきたんか分からんね。あっという間。比較的うまくいったのかな」としみじみ振り返った。今秋から長男直太氏(44)が後任監督に就任しており、広岡氏は今後、総監督としてチームを支援する。【林亮佑】

◆広岡正信(ひろおか・まさのぶ)1954年(昭29)1月30日生まれ。関西学院出身で、77年8月から報徳学園でコーチを務める。報徳学園中での指導経験を経て、86年から報徳学園監督に就任。89年センバツに出場し、監督として甲子園初白星を挙げた。90年から関西学院を率い、98年春と09年夏に甲子園出場。09年は同校に甲子園史上最長ブランクの70年ぶり甲子園勝利をもたらした。

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