第95回選抜高校野球大会(3月18日開幕、甲子園)の出場校を決める選考委員会が27日行われた。名門・東北(宮城)が、東日本大震災が発生した11年以来、12年ぶり20度目となるセンバツ出場を決めた。同校OBで昨年8月に就任した佐藤洋監督(60)は、4度出場した甲子園に指揮官として帰還する。

名門・東北が甲子園に帰ってくる。センバツ出場は五十嵐征彦校長が監督を務めていた11年以来12年ぶり。佐藤監督と同校長は室内練習場で、選考委員会総会の様子をパソコン越しに視聴。選手たちは素振り、投球練習、ウエートトレーニングと体を動かしながら運命の瞬間を待った。東北地区代表として「東北高校」の校名が呼ばれると、2人はがっちりと握手。指揮官は「選手たちがどれだけ伸び伸びやるのか、楽しんでやるのか、勝ち負けではないので、すごく楽しみ」と力を込めた。

昨年8月に就任した佐藤監督のもと、大改革を断行した。「高校野球は大人たちのものじゃない。子どもたちのもの」と自立・自律をテーマに楽しむ野球を追求。自身の呼び名は「監督」ではなく「ヒロシさん」。丸刈りを廃止し、真夏の練習ではTシャツ、短パンも認めた。BGMが流れる中で練習が行われ、この日は嵐の「夏疾風」やファンキーモンキーベイビーズの「あとひとつ」などが室内練習場に響き渡った。

監督が交代し、選手たちに不安がなかったわけではない。それでも、昨秋は「エンジョイベースボール」で快進撃を続けた。宮城県大会決勝で昨夏甲子園王者の仙台育英に2-1で競り勝ち優勝。同一カードの東北大会決勝は3-6で敗れて準優勝も、名門復活を印象づけた。佐藤響主将(2年)は「県大会も東北大会も『楽しむ』をモットーに勝ち進むことができた。全国大会も変わらずに楽しんだプレーを全国の皆さんに見せたい」と誓った。

センバツでの目標は優勝ではない。佐藤主将は「奇跡的に集まった(部員)46人が、センバツという舞台で、いい思い出をつくれるか、悔いのないプレーを大舞台でどれだけできるか」にフォーカスするという。寮生活も一緒で「お父さん」的な存在のヒロシさんと東北ナインが、甲子園で多くの笑顔を咲かす。【山田愛斗】