大分商がまさかの幕切れで初戦敗退となった。強打の作新学院(栃木)を相手に、終盤に追い上げた。2点差に迫り、9回1死一、二塁。6番丸尾櫂人外野手(3年)が左飛に打ち取られた場面。二塁を回った一塁走者の江口飛勇外野手(3年)が、二塁ベースを踏まずに一塁に戻ったため、相手のアピールプレーにより併殺となる「珍事」でゲームセット。26年ぶりの春1勝を逃した。

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追い上げムードが一転、突然のゲームセットになった。2点を返してなお、長打で同点の9回1死一、二塁。ここで、6番丸尾が左飛を放った。鋭い打球に、一塁走者の江口は次の塁を狙おうと必死だった。二塁ベースを蹴ったが、左翼手がキャッチ。あわてて一塁に戻ったが、二塁ベースを踏み忘れていた。「(一塁に)ついた時に相手チームの空気が少しおかしかった。何かあったのかと思ったら、振り返ったらそういうことだった。踏んだつもりで(一塁に)帰ったので、頭の中がパニックで…」。痛恨のミスだった。

結果、相手のアピールプレーにより併殺で、試合終了。江口は涙が止まらない。「点差も追いついてきて、球場もうわーっとなって、自分の中で冷静な判断ができず、ホームを踏みたい思いで、冷静になれなかった」。声出し応援の復活の影響もあってか、浮足だった。「自分の判断ミスでチームに迷惑をかけてしまったので、とても申し訳なく思っています」。5番で3安打2打点の活躍を見せた一方で、悔しさをにじませた。

それでも、9安打6得点。7回には泥臭く粘って1点差に迫るなど、昨夏の主力が多く残る関東の強豪校に堂々と対峙(たいじ)したことは収穫だ。

那賀誠監督(55)は「責任が江口にあるようなことではない。ルール把握とか課題として残ったので、夏に向けて取り組ませたい」と教訓とした一方で、選手の奮闘に「素晴らしい経験ができたことは財産。財産になるようにしないといけない」と前を向いた。「トドメを刺すところの、ここぞの1本はまだ心意気が足りない」という精神面を鍛え直して、出直す。【菊川光一】

○…昨秋公式戦で防御率0点台の投手陣が踏ん張れなかった。先発のエース児玉が2回に3連打など集中打を浴びて4失点。「2回にビッグイニングがあって、チームの流れが悪くなった」と反省した。6回から2イニングを継投した背番号「10」の飯田も4失点。必至の3継投も、流れを呼びこめなかった。

【センバツ】アピールプレー前にアウトコールし審判謝罪 再開直後にアピール成立でゲームセット