やれたらやり返す! 作新学院(栃木)が英明(香川)との一進一退の攻防を制し、8強一番乗りを果たした。

8回に7ー4と逆転に成功したが、その裏、1点を返され、さらに逆転3ランを浴びた。万事休すかと思われたが、9回1死一塁から、武藤匠海内野手(3年)が左翼席へ逆転2ラン。「逆転弾返し」で決着をつけた。作新学院の春8強入りは、小針崇宏監督(39)が2年時に出場した00年以来、23年ぶりとなった。

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武藤に迷いはなかった。「左中間に打ってこい」と、小針監督に送り出された最終回の打席。直前に3ランで逆転を許し、沈んだベンチを見て「自分が何とかする」と奮い立った。

2ボールから甘く入った真っすぐをフルスイング。打球は左翼席へ吸い込まれた。「ボールがつぶれてバットに乗ったような感じがしたので、『これはいったな』という感覚でした」。確信弾の手応えに、右手を高々と上げてガッツポーズ。「甲子園で打つホームランは何よりも気持ち良かったです」。ベンチに戻ると、8回裏に再登板して被弾した磯圭太内野手(3年)が「ありがとう…」と涙を流していた。笑顔の武藤と、涙の磯。何度も、何度も、力強く抱き合った。

WBCで大好きなレッドソックス吉田の活躍に勇気をもらった。「自信があるから、空振りを怖がらずに振っている」。自身は4番だった昨秋、打率2割1分1厘、0本塁打と結果を残せず、この冬は小さくなっていたスイングを修正した。「変化球にタイミングをずらされていたので、軸足の強化に力を入れた」。毎日約4時間、徹底的に振り込んだ。「今日は空振りを怖がらず、思い切って振れました」と、最終回の逆転V弾につなげた。

自然豊かな栃木・上三川町で育ち、幼稚園ではいつも木登りで遊び、足腰を鍛えた。同じ地区出身の磯は「武藤は運動神経がいいと有名だった」と、名の知れた子供だった。栃木下野シニアでチームメートになると、2人で甲子園を目指し、大舞台で勝利の喜びを分かち合った。

作新学院はベンチ入りの全18選手が出場。全員が役割を果たしてつかんだ8強入りだった。武藤は「ここまできたら優勝を狙いたい」。チーム全員で頂点へ。その勢いは止まらない。【保坂淑子】

◆逆転弾の応酬 8回に英明・百々が逆転3ランを打てば、9回に作新学院・武藤が逆転2ラン。センバツで逆転本塁打を打ち合ったのは、13年2回戦で敦賀気比・米満が2回、京都翔英・小谷が5回にそれぞれ3ランを打って以来。8回以降の応酬は大会史上初。

◆18人で勝利 作新学院はベンチ入り18人が全員出場。03年夏にベンチ入り人数が18人に増えて以降、センバツで全員起用の勝利は初。夏は昨年の仙台育英が鳥取商戦で記録している。