史上初の2度目のセンバツ連覇を狙う大阪桐蔭が、大苦戦の末に8強に進んだ。1-0勝利は同校甲子園88試合目で初だ。7回表のピンチでは西谷浩一監督(53)が2連続伝令を送って失点を防ぎ、その裏にスリーバントスクイズ成功。監督のセンバツ勝利記録に王手をかけた名将が底力を見せた。

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勝負は7回の攻防だった。0-0の7回表1死一、二塁の守備。大阪桐蔭・西谷監督は力投を続ける南恒のもとに伝令を送った。「打たれてもいいから思い切って投げろ」。野手には「投手に任せるな。全員で、全球に集中しろ。全部自分のところに来ると思って準備しろ。攻めの守備をしろ」と指示した。

気持ちが引くと押し込まれ、球場の雰囲気も変わる。昨夏敗れた下関国際(山口)戦の苦い経験が生きていた。右腕が暴投で1死二、三塁としながら見逃し三振を奪うと、西谷監督は再び伝令を送った。「9人全員で切り抜けろ」と念を押した。「2死で少しホッとする。同じ気持ちでと思って」。次打者を右飛に抑え、窮地をしのいだ。

その裏、三塁打で1死三塁の大チャンスが到来。スクイズのタイミングを計っていたが、村本は2球振りにいき1ボール2ストライクと追い込まれた。強攻の雰囲気が流れる中、指揮官は「直球が来る可能性が高い」と読んだ。村本は高めの直球をうまく転がし、決勝点をもぎ取った。

12年のセンバツ。準々決勝の浦和学院(埼玉)戦で、1-1の7回に藤浪晋太郎(現アスレチックス)が無死満塁の大ピンチを招いた。ここから西谷監督は藤浪のもとに3者連続で伝令を送った。しつこいほど確認事項を受け取ったエースは、圧巻の3連続三振で窮地を切り抜けた。春夏制覇に道をつなぐ大胆なベンチワークは語り草だ。

史上最多、春夏8度の甲子園優勝を誇る西谷監督はセンバツ監督勝利数が30に到達。最多のPL学園・中村順司氏に王手をかけた。「ずっとシビれていました。しんどかった。投手戦になるとは思ったが、ここまで打てないとは」。勝負のにおいを嗅ぎとる百戦錬磨の采配だった。【柏原誠】

○…先発の南恒が投手戦で0を並べた。5回までは無安打投球。7回に1死二、三塁としたが、「引いたら持ち味は出ない。打たれてもオッケーでしっかり投げ込もう」と内角直球で見逃し三振。次打者も直球で右飛に抑えてピンチを脱した。持ち味の強気の投球がさえ、8回途中を無失点。「自分の投球ができたのはすごくうれしい。次も目の前の1勝を全員で取りたい」と充実感たっぷりだった。

◆連続1-0 センバツでスコア1-0が同日に2試合続いたのは、08年3月26日の○華陵-●慶応、○沖縄尚学-●聖光学院以来15年ぶり。この時は2試合とも1回表の1点を守る「スミ1」完封だった。

◆スコア1-0 センバツ史上で見ると最も多いスコア。1-0は大会通算154度目となり、最多の3-2と並んだ。次いで2-1が152度ある。

【センバツ】8強出揃う 大阪桐蔭、仙台育英、報徳学園、東海大菅生がベスト8/スコア詳細