山梨学院が、悲願の初優勝を飾った。初めて進出した決勝で報徳学園(兵庫)に勝利し、第95回センバツ高校野球大会に出場した36校の頂点に立った。山梨県勢としても、夏を含めて甲子園初優勝となった。

試合は4回に2点先制を許したが、5回にビッグイニング。2番星野泰輝外野手(3年)の左前適時打で勝ち越すなど、1本塁打を含む6安打集中で大量7点を奪い、逆転に成功した。

吉田洸二監督(53)は、09年の清峰(長崎)に続き山梨学院も優勝に導いた。準決勝後には「めちゃくちゃうれしいです。何回も県民の期待を裏切ってきたので、これで勘弁してくれたら、と思います」と話していた。

最後まで、選手たちのスタミナは落ちなかった。“鉄腕”エース林謙吾投手(3年)は、今大会の開幕戦として迎えた1回戦から全6試合に先発。この日も6安打3失点で完投し、今大会は6戦6勝とまさに大黒柱の働き。背番号1としてチームのために腕を振った。野手陣も、集中力を切らさず堅守を見せた。

スタミナの裏には、伝説の“地獄の合宿”がある。吉田監督が、清峰時代から12月末に長崎で行う強化合宿だ。その内容について、指揮官は「山登りです。山を一生懸命、走る。以上です。山を一生懸命、しっかり走ります」と表現する。

昨年の12月は、1年生部員(新2年生)のみを吉田監督が引率して行われた。

その練習とは…聞くだけで恐ろしいほどの内容だ。午前中の3時間、ひたすら山の中の階段を上り続けるという。なだらかな傾斜の約100段を上り切ると、さらに左右には傾斜のきつい階段が約50段ずつ。それをひたすら上って、降りる。清峰時代からの名物メニュー。同校OBで元広島投手の今村猛氏(31)は「プロに入ってからも、いろいろ厳しい練習はしましたが、それよりもきつかった練習です。思い出すだけで怖い」と話すほどだ。

キツイ練習だけではないことが、吉田監督の手腕だ。合宿を経ることで、フィジカルだけでなく心も、絆も強くなる。体がしんどくなり、途中で足が止まる選手も出てくる。そんな時は、選手同士が声をかけ合い、励まし合う。参加した山梨学院の部員は「離脱しそうになる選手もいるけど、みんな同じメニューをやっているので、厳しいことを言ったりして、結局は全員がやるんです。だから途中で止める選手はいません」と明かす。

全員で合宿を乗り越え、全員で強くなる。助け合い、励まし合った経験がチームとしての力になっている。

◆山梨学院 1956年(昭31)創立の私立校。普通科に特進コース、進学コースがあり、生徒数は1049人(女子445人)。野球部は57年に創部。部員数は49人(女子2人)。甲子園出場は春6度目(20年の交流試合含まず)、夏は10度。主なOBは元巨人松本哲也ら。所在地は甲府市酒折3の3の1。吉田正校長。

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