土浦日大の「こだわりエース」藤本士生投手(3年)が、八戸学院光星の強力打線を手玉にとった。3点を先制して迎えた4回裏、1点を返されなお1死一塁から2番手としてマウンドに上がると、真っすぐとチェンジアップを操って後続を封じた。打者によってセットポジションからクイックで投げるなどタイミングを巧みに外し、5回2/3を5安打1失点。「スイングは強かったんですが、優位なカウントでチェンジアップを決め球に打ち取れました」。味方の援護を受け、流れを引き寄せた。

ピンチの時ほど「自分らしさ」で投げきった。「攻めない限りは打ち取れない」。最大の武器は4種類のこだわりのチェンジアップだ。「器用じゃないので、手の大きさを利用して1つの変化球のバリエーションを増やそうと思った」。高校1年、左肘の胸郭出口症候群で1年間リハビリになると、本や動画でチェンジアップを研究。速さの違う2種類と曲がりが違う2種類を習得した。

小さいころから野球が大好きだった。小学校時代は父謙一さん(49)の仕事の関係で北海道で過ごした。日本ハムの大ファンで大谷翔平、ダルビッシュ有の投球にくぎ付けになった。録画した試合は繰り返し見て、自分でスタメン表を作り野球盤で遊んだ。小1で野球を始めると、練習後には父がアナウンサー役でヒーローインタビューの練習もした。約10年後、聖地でたくさんの記者に囲まれ「お父さんとの練習の成果が出てるかな」と笑ってみせた。

初の4強入りに「日本一を目指したい」と意気込む。準決勝の相手は、快進撃を続ける慶応。同じ長髪が特徴だ。藤本は「かっこいい選手が何人かいる。負けたくないのは丸田選手です」と、SNSで「さわやか」と話題の好打者を抑える覚悟だ。「(大会前に)横3ミリ、ツーブロックにならない程度の長さにカットした」と笑顔でヘアスタイルのこだわりも明かしたエースが、サラサラヘア対決を制する。【保坂淑子】

◆藤本士生(ふじもと・しせい)2005年(平17)5月6日生まれ、埼玉県出身。小1からC・Sライズ(北海道)で野球を始め小6から中1まで川口リトル(埼玉)。17年全国選抜大会優勝。18年世界大会3位。その後、中3まで志村ボーイズ(東京)でプレー。土浦日大では1年秋から投手兼一塁手としてベンチ入り。目標とする選手はDeNA今永昇太。180センチ、83キロ。左投げ左打ち。趣味はグラブ磨き。

▽土浦日大・小菅勲監督「次の1点をどう取るかという展開だった。その時にマウンドに立っているのは誰だと考え、藤本に代えた。しっかり自分の力を出してくれた。守り切ったのはさすがエースです」