高校野球の対外試合が2日、全国で一斉に解禁され、各地で練習試合が行われた。

能登半島地震で被災した日本航空石川は、第96回選抜高校野球大会(3月18日開幕、甲子園)出場へ向け、新たな練習拠点となっている山梨・甲斐市内のグラウンドで系列校の日本航空(山梨)と対戦し、12-4で快勝した。左のエース猶明光絆投手(1年)がこの日最速140キロを計測し、5回1失点。打線は15安打と投打がかみ合い、甲子園へ向けて好発進した。

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「今年入って初めての練習試合で緊張して、少し力みが入ってしまいました」。最速142キロを誇る184センチの左腕エース、日本航空石川の猶明は力が入っていた。中村隆監督(39)が「コントロールが元々良い子なのに、制球に苦しんでいたのは予想外。アドレナリンが出過ぎていたのかな」と驚くほど序盤は力んだが、尻上がりに調子を上げて5回を1点に抑えた。

3番手でマウンドに上がった福森誠也投手(2年)は、チームで唯一、避難所で過ごした経験がある。昨秋はベンチ外。今は甲子園メンバーを狙える位置にいる。2回2失点も、内角へ直球を力強く投げ込み「地元の友達や輪島のいとこも応援してくれている。その応援に応えられるように」と意気込む。中村監督は「彼の背中には、たくさんの思いが乗っているんだろうなと。福森だけではないんですけど。私も本当に下を向いていちゃいけないと思いながら、やらせてもらっています」と、こみ上げる思いに目頭を押さえた。

今年最初の真剣勝負の相手は、同じ空間で過ごす仲間だ。グラウンドなどが震災の被害を受け、部員たちは年明けから系列校の日本航空の施設へ活動拠点を移した。あれから約2カ月。宝田一慧主将(2年)は「お風呂や食堂で一緒になるので、仲良くなりました。『甲子園、頑張ってね』って応援してくれたり」と、今では、かけがえのない同志になった。

中村監督も環境に感謝の言葉を述べながら、大事な24年の初戦に挑んだ。「山梨の生徒さんのグラウンドをお借りして、共に練習をやっています。同じ甲子園というところを目指して、お互いやっている」。対外試合解禁日。「初戦に山梨校とやらせていただけるのは、本当に光栄です。感謝の気持ちを持って、試合をさせていただきました。センバツまでまだ少しありますので、追求してやっていきたい」。故郷石川を離れ、山梨で磨きをかけて、間もなく聖地へ乗り込む。【佐瀬百合子】