第106回全国高校野球選手権神奈川大会(7月5日開幕)の組み合わせ抽選会が8日、横浜市内で全国の先陣を切って行われた。15年ぶりVを狙う横浜隼人は、プロ注目の沼井伶穏(れおん)投手(3年)が思いを強くする。ナイジェリア人の父を持つ最速149キロ右腕には、将来に明確な夢がある。アフリカの子どもたちのためにいつかメジャーで-。

     ◇     ◇     ◇

長い冬に横浜隼人・沼井は鍛え抜いた。「走り込みをした後の冷たい水は最高でしたね」。その潤いを遠い大地に届けたい。

少年時代、テレビを見て泣いた。母の愛さん(46)が「号泣しちゃうんですよ」と回想する。画面に映るのはユニセフのCM。「水を飲めなくてかわいそう、って。CMの黒人の子が自分と近い感じがして、感情移入もあったのかな。すごく優しい子なので」。

父はアフリカ西岸の国、ナイジェリアの出身だ。受け継ぐDNAが内側から己をたたく。中学生になり「アフリカのために」が野球の最終目的になった。「CM…あ、泣いてましたね」と照れくさそうにし、真顔になって夢を語る。

「アフリカには難民の子もたくさんいて、汚い水を飲んで死んじゃう子も多いと聞いたことがあります。なんとかきれいな水を飲ませてあげることはできないのかなって。自分でそれをサポートするために、いつかメジャーリーグで活躍してお金を稼ぎたいなって思っています」

難民の子どもたちに水道を引いてあげたい-。夢へのスタートラインには立った。まずはNPBを志す。5月までに大半の球団が視察を済ませ、沼井の高い潜在能力を評価。練習試合ではセンバツ王者の健大高崎(群馬)の主軸も押し込んだ。全国屈指の激戦区神奈川の「NO・1右腕」との呼び声もある。

「神奈川は打つチームが多いので、自分がどう圧倒的な力を出せるか」と7月を見すえる。日々の練習を重ねながら「簡単にレジ袋をもらわずエコバッグを持って行きます」とイチ高校生としてSDGsも実践中。1回戦は横浜平沼と7月7日に戦うことが決まった。洋々たる未来への第1球を投じる。【金子真仁】

◆沼井伶穏(ぬまい・れおん)2006年(平18)7月16日、横浜市青葉区生まれ。青葉ドリームズで野球を始め、中学時代は中本牧シニアでプレーした。憧れの選手はダルビッシュ有。186センチ、82キロ。右投げ右打ち。