<全国高校野球選手権:新潟産大付2-1花咲徳栄>◇9日◇1回戦

田端は野球ができる喜びをかみしめてプレーした。捕手として先発上原を好リード。11安打されながらも打たせてとり、2得点に抑えた。勝利には届かなかった。だが下は向かない。「野球ができることはあたり前のことじゃない。堂々とプレーができた」と胸を張った。そこには姉・優衣さん(20)の存在があった。

優衣さんはプロのバレエダンサーで、22年2月までウクライナ国立バレエ劇場に所属し活躍した。しかしロシア侵攻が始まり、戦火を逃れ帰国した。優衣さんは「私がいたキーウ(キエフ)はまだ大丈夫でしたが警報はすごかった」と振り返る。耳に残るサイレンの音と、恐怖と隣り合わせの日々。やっとつかんだ夢の舞台も、あきらめた。そんな時、支えになったのが弟太貴の姿だった。「チームの一体感、一生懸命な弟の姿。前向きに捉えて生きようと思いました」。帰国して泣いてばかりの毎日に、一筋の光が差し込んだ。今夏、地方大会は全試合を観戦した。

現実味のない「戦争」と、いつも明るい姉の涙。「好きなことをやりたくてもできない人もいる。僕は全力でやるしかない」と太貴。姉に見守られ、甲子園では全打席フルスイング。1打席目では左前打も放った。「今日は全力でプレーができました」。みんな、同じ空の下。境遇は違っても、全力で生きるその姿は示せたはずだ。【保坂淑子】