アマチュア野球界で見せるジェンダーレスの動きは現在どうなっているのか。今回のアマチュア野球特集は「広がる女性活躍」と題して全2回で紹介する。第1回は現在、高校野球でただ一人の女性監督、洛南(京都)の山村真那さん(36)をインタビュー。就任12年目の夏を迎えた今大会を節目に、監督業を退く決断をした経緯や女性指揮官という立場、部員たちへの思いを聞いた。【佐藤妙月】
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高校野球唯一の女性指揮官、洛南・山村真那監督は京都市の翔鸞(しょうらん)小6年から神戸親和女子大卒業までソフトボールで活躍した。その経験を買われ、体育の非常勤講師で赴任した山城(京都)で同校監督に声をかけられ、野球部コーチに就任。その後赴任した洛南でもコーチを務め、前監督が退任した15年4月に後を継いだ。そして12年目の今夏、監督を退く決断をした。
-今夏限りで退任する
山村監督(以下山村) 現在部長として在籍している先生が、今年度常勤(講師)から教職員になったタイミングで。彼に去年打診してみたら「やってみたいです」と言ってくれて。「じゃあよろしく」って。(以前から)誰か監督をやりたい人が来たら譲ると言っていて。OBとかにも声かけていたんです。
-女性監督としてメディアにも取り上げられてきた
山村 「確かに珍しいよな…」ぐらい。別に私自身「女性だから、男性だから」って考えてやったことがなくて。もう自分は自分。
-生徒たちの受け止めは
山村 そんなに変わらないと思いますよ。でも選手たちは、その人の人となりを見てるなというのは分かります。どんな監督なんやろうっていう感じなんやと思います。
-いまとなっては“洛南の監督と言えば”の存在に
山村 そうなってますかね。12年目ですからね。こんなにやるとは思ってなかった。
-高校野球の女性監督史、最長なのでは
山村 わたしのなかでは、わたしが今一番長いんやろなって自負しています。
-就任当初は苦労も
山村 最初の1、2年は本当に何もしてあげられなかった…。でも、子どもらは一生懸命やってるから、ノックしてって言われたら「ノックだけはいつでも打ってあげよう」という感じでした。
-野球とソフトボールは違う
山村 飛距離がやっぱり違いますね、男の子の球は。
-就任3年目から変化が
山村 わたしの中で変わったのは、当時の外部コーチに「本当に何も知識ないし、どうしたらいいか分かりません」って話したんです。そしたら「今、先生ができはることをやってあげたらいいだけじゃないですか。野球って監督が采配しますけど、ラグビーとかって選手が指示出すことも多いですよ。(京都屈指の進学校で)この子らは賢いんだから、自分たちでできるようになります。そういう新しい野球をやらはったらどうですか?」って言ってくれはって。「なるほど、そういう考え方ね」って。サインは統一しないといけないから出すことはありますけど、自分らで考えて動けたら最高やなって。だから基本、小言しか言わないようにしています。練習メニューも「自分たちで考えて」って。
-考えさせる意図は
山村 何がなんでも勝たすっていうイメージはあまり持ってなくって。もちろん勝たせてあげたいし、延長線上には公式戦で勝ってほしいなってもちろん思ってます。でも、この子らが一番活躍してほしいのは、社会に出た時なんですよね。その時にこうして自分らで考えて動くことがすごく大事だなと思っていて。
だから、私自身が「監督ありがとうございました!」なんて、全然思ってほしくなくて。その代わり、3年生とか上級生に「先輩がいてくれてよかった」とか、先輩に感謝でいい。それに関係は私とじゃなくて、そこが一番つながっていくじゃないですか。卒業してもみんなで旅行に行ったりとかね。
-退任を伝えた時の部員の反応は
山村 もしかしたら私は野球部を完全に離れるかもしれへんし、まだずっと顧問として居続けるかもしれへんし、何年後かにまた監督に戻るかもしれへんし、全然先は分からへんねんけど…。でも、私の中ではいったん一区切りで、もう監督として過ごす夏の大会は、これが最後だと思ってるからよろしく。今まで秋は2~3回勝ったことあるけど、夏1勝しかしてないし、ぜひ2勝頼むわ」って言ったんです。そしたらその日のうちに、ホワイトボードに(夏2勝って)書いてくれたんですよ。可愛くないですか!?(笑い)「これはうれしいわ!」って。
-願いをかなえてもらう
山村 (今季は新たに)コーチが来てくれたから、技術とかもっと詳しく言ってくれたらよりハマるやろうなって。万々歳です、今回は。夏2勝のために、選手たちはめちゃくちゃ頑張ってくれると思うので、私も頑張ります!
監督就任後の通算は夏1勝、秋5勝で、最高成績は夏、秋の2回戦。今夏もノーシードのため、龍谷大平安、京都外大西、京都国際などの強豪校と早い段階でぶつかることも多い。組み合わせ抽選会は今月20日に行われる予定。1日でも長い夏を目指す。
◆山村真那(やまむら・まな)1990年(平2)3月2日生まれ、京都市出身。翔鸞小6年からソフトボールを始め、衣笠中、嵯峨野(京都)、神戸親和女子大でソフトボール部に所属。卒業後、2年間山城に勤務し、14年から洛南へ。15年4月に硬式野球部監督に就任した。好きな選手は広島大瀬良。165センチ。右投げ右打ち。体育科教諭。
○…日刊スポーツが全国47都道府県の高野連に取材したところ、高校の男子硬式野球部で采配を振るう女性監督は洛南(京都)の山村監督だけだった。山形でも女性監督が登録されている学校が1校あるが、部員が9人に満たず、連合チームとして出場する公式戦では男性監督が指揮を執っている。
2010年代後半には長岡農(新潟)の井上麻子さんや「東北初」の女性監督として注目された涌谷(宮城)の阿部奈央さんらがいたが、ともに現在は退任している。東京電機大高(東京)を指揮した市川麻紀子さんも昨夏を最後に監督職から退き、今夏は助監督と立場が変わって挑む。男子の高校野球界において、一時期盛り上がりを見せた女性監督登用の流れは下火の傾向にある一方で、栃木や和歌山、徳島などでは女性部長が活躍する学校も見られる。徳島では、春夏通算24度の甲子園出場を誇る鳴門の鳴川幸恵校長が、同県初となる女性の高野連会長に就任したことも話題となっている。

