敗退チームのドラマにスポットを当てる「胸張ってイイじゃん」を随時掲載し球児たちの奮闘に迫ります。

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5回、最後の攻撃が始まると、住吉(神奈川)の三塁コーチャー、犬田結羽内野手(3年)の目から涙があふれた。「いい試合ができた」。試合後、再び涙があふれた。

完全燃焼の野球人生だった。1歳3カ月で小児がんの一種、ウィルムス腫瘍(しゅよう)を発症し、左の腎臓を摘出した。小さな体で抗がん剤治療に耐え克服したが、その影響で幼少時は手術や入退院を繰り返し、現在も3カ月に一度の経過観察を続けている。治療の影響で身長は152センチ。それでも、誰よりも大きな声と元気、努力は誰にも負けなかった。

野球との出会いが犬田を変えた。母則子さんの勧めで小1で野球を始めると、野球のとりこになった。「できることを一生懸命やればいい」と母の言葉に励まされた。小技と守備は誰にも負けない。高校ではウェートトレーニングにも力を入れた。

劣等感を感じることもある。小さい頃は、抗がん剤の副作用で髪がないことをイジられたこともある。そんな時は「生きているんだし、いいじゃん」と笑顔で前を向いた。「最初から僕の人生、病気で始まっている。変えることはできない。でも、救ってもらった命。半端に生きられない。簡単にくじけるわけにはいかないんです」。運命を受け入れ、明るくたくましく成長した。

試合後、母が優しく声をかけた。「かっこよかったよ。よくここまで大きくなったね」。頭をなでられギュッと抱き締められると、涙がこぼれた。野球はここで一区切り。「頑張ったねって自分を褒めたい」と犬田。その笑顔は、誰よりも輝いていた。【保坂淑子】